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 ガララ



「お姉ちゃん!!」

「かがみ!!」

 保健室のドアがけたたましく開かれ、それと同時に入ってきたのはつかさとあいつだった。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん!! 大丈夫!? 死なない!?」

 泣きながら私を押し倒しそうな勢いで抱きついてくるつかさ。

「うん、大丈夫。ごめんね心配かけて」

 私はつかさに心配をかけないように笑って、その頭を撫でる。つかさは私の言葉に何度も頷くだけだった。

 そしてあいつの方はそんな私達を少し距離を開けて見ていた。





「貧血と軽いストレスで倒れただけですから、今日一日、栄養を取って休めば大丈夫です。安心して下さい」

 私の変わりに養護教諭の天原先生が二人に説明をする。

「それと、心配なのは分かりますけど、二人とも保健室はもう少し静かに入って来て下さいね」

「あっ…はい…ごめんなさい………」

「すみません、オレが勢いよくドアを開けすぎたのが悪いんです」

「反省してくれればそれでいいですよ。

 それだけかがみさんの事が心配だったんでしょうから」

 そっか。あいつがここに来たって事は、私を心配してくれたって事よね

 つかさの付き添いって可能性もあるけど………

 でもこれで幸か不幸かあいつと話せる機会が出来てしまった…やっぱり逃げてても駄目よね



「天原先生、つかさ。シンと二人で話したいんですけどいいですか?」

 私は視線をあいつの方に向けながら二人に言った。





「……取りあえず座ったら? 立たれたままじゃ話しづらいし」

「……ああ」

 あいつは頷くと先生用の椅子を引き寄せてそこに腰掛ける。



「……この前はごめんね…その…あんなに動揺して………」

「別にいいって、当然の反応だからな」

 あいつは無表情で答える。

 そこからは感情を読み取る事が出来ないけど、哀しげな雰囲気は伝わってくる。

「怖かったんだろオレが?」

 あいつの声は普段から考えられないくらい無機質で、その中にはそれが当然という諦めの感情が含まれていた。

「お前を怖がらせたのは本当に悪いと思っている」

 私が無言なのを肯定と受け取ったのか、あいつは話し続ける。



「だから―――」



 そうじゃない



「もうオレとは―――」



 違う



「やめて!!!」

 私の思わず出た声に驚き、あいつは無表情を少しだけ崩す。

「……私は…私はあんたにそんな顔して欲しくないから…だから………」

 また私泣いてる…あいつのことになるとすぐに感情が爆発する…ほんと最低………。

 でも最低でもいい…私はこんな形であいつと別れたくない………。

「……じゃあお前はオレが怖くないって言うのか?」

 あいつは呟くように聞いてくる。

 そこにあるあいつの顔は無表情に戻っていた。



 こんな顔させたのは私のせい。

 私があの時あいつを、もっとしっかり受け止められることが出来たら、

あいつはこんな顔をしなくて良かったのに…だから、今度は言わないと…私があいつの事を―――





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