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「クソーッ!」
自分の部屋に戻るとオレは八つ当たりに机を叩く。
叩いた事による痛みはあったものの、そんなものは湧き上がってくる後悔からしたら些細なものだった。
かがみはオレの事を知りたいと言ってくれた。
それなのにオレはかがみをいたずらに恐れさせ、拒絶する態度をとってしまった。
あんな事をかがみに言うつもりはなかったし、言っても意味がない事なのに………。
……怖かったのか、オレは?
過去を知られて、かがみに拒絶されるのが………。
だからオレは先にかがみに拒絶する方法を無意識に選択したのだとしたら、オレは自分が思っていた以上に情けないヤツだ。
そして、かがみとオレの道は恐らくもう交わる事はない………。
「……いや、これで良かったんじゃないか?」
オレは誰もいないのに、まるで誰かに話しかけるように、喋りだす。
「だいたいアイツは色々と口うるさいし、負けず嫌いだし、見栄っ張りだしさ。
あんなヤツとは縁が切れて…クソっ!!!」
言うたびにかがみとの思い出が脳裏に浮かんでくる。
あいつは、かがみは………
この世界で初めてオレとケンカしてくれた。
この世界で初めてオレのために泣いてくれた。
この世界でオレが生きてもいいって教えてくれた。
「……かがみ………」
♪ 誰だれだれが? ♪
オレの呟きと同時に携帯からのメールを伝える。
オレはしばらく携帯を凝視してから、手に取る。
送られてきたのは絶交の宣言か、それとも………
『土日のどっちか空いてる?
トレーニングに付き合って欲しいんだけど………』
かがみのメールを文字通り捉えるほど、さすがにオレも馬鹿じゃない。
かがみはオレに何かを話そうとしている。それが何かは分からないが………。
逃げるわけにはいかなかった。かがみと話せる機会はこれが最後かもしれないから………。
オレは2日とも空いてる旨をかがみにメールで伝えた。
だけど、土日にオレとかがみが会う事はなかった。
その2日間、オレの決心を鈍らせるかのように雨が降ったからだ。