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 あいつから空気を戻そうとしたという事は、私に怒っているわけじゃない。

 じゃあなんであんなにあいつは動揺したんだろ?

 やっぱりそれもあいつの過去に関連するものなのかしら?

 ……でも聞けない。今聞くと私とあいつの関係が壊れる、そんな気がしたから。だから聞けない、今は………。



「ねえ、私がミス陵桜になったらどうする?」

 代わりといってはなんだが、私にはもう一つ聞いておきたかった事をあいつに尋ねる。

「どうするって?」

「ほら、私を見る目が変わるとか………」

「なんでだ? ミス陵桜になったらお前はどっか変わるのか?」

 やっぱり皆が言ったみたいにはならないわよね。

 まあそうなる事は予想済みだったけどね。

「それにさ」

 あいつは言葉を切って、唇の端をつり上げる。

「アンタがミス陵桜ってガラじゃないだろ」

「な、なんですってー!? それどういう意味よ!?」

「ん? そのままの意味だ♪」

 分かってるわよ! ガラじゃない事くらい!

 ……でも何もそこまではっきり言う事ないじゃない………。

「じ、じゃあ、もし私がミス陵桜になったら?」

「その時はかがみの言うことなんでも聞いてやるよ」

「よーし、言ったわね! 絶対、吠え面かかせてやる!!」

「期待してるぜ。じゃあ帰るか」

「そうね…あ、あれ?」

 立ち上がった瞬間に足の力が抜けて、私は再びその場にへたり込んでしまった。



「足に来てるな」

「うっ………」

「仕方ない、ほら」

 そういってあいつは私に背を向けて屈んだ。

 ま、まさかこの体制は…お、おんぶー!?

「いや! ぜっっったいいやー!」

 私は真っ赤になりつつ、手と顔を横に全力で振ってあいつの提案を拒否する。

「恥ずかしがってる場合か?

 あんまり遅くなると家族の皆が心配するだろ?」

「うぅぅぅー」

 私は小さく呻いて尚も抵抗するも、家族を出されたらどうしようもない。

 私は本当に、どうしようもなく、仕方がないのであいつの肩に手をかけた。



 いつもだ。いつも私が困っているとあいつがやり方はどうであれ助けてくれる。

 私ばっかりが助けてもらってる………。

 でもあいつが困ってる時、私はあいつを助けてる? 助けられる?

 私はあいつの背中に尋ねるが、当然答えは返ってくるわけがなかった。





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