21
「ほら、息を吐きながら伸ばせ」
公園に着いた私達は早速あいつの指導の下、柔軟から開始する。
「ず、随分と、に、入念に…やるの…ね………」
「ケガを防ぐためだからな…よし、これくらいでいいだろ」
長かった柔軟が終わり、ようやくこれからが本番。
よーしやるわよ!
「はぁはぁはぁはぁ! はぁはぁはぁ、し、死ぬ〜!」
情けない声を上げてへたり込んでるのはあいつ…ではなくて私。
「まあ今日は時間もないしこんなもんだろ」
「き、今日はこ、これだけ、はぁはぁ、って事は、はぁはぁ、あ、明日は、はぁはぁはぁ………?」
「明日は時間あるしこれ以上」
「お、おに〜」
笑顔で答えるあいつを私は力なく睨む。
私だって体力にはそれなりの自信があったんだけど、あいつとの体力差は男女差の違いだけでは片付けられない差があった。
「ほらそこらへんでクールダウンして休んでろ」
「あんたは?」
「今のは準備運動だからな。ここからだ」
「化け物かあんた」
「……かもな」
私の軽口にあいつは表情をしばらく強張らせてから、自嘲的な笑みを浮べる。
えっ? 私なんかまずいこと言った………?
……全然思いつかない…でもそれはあいつの傷ついた様子を見れば明白だった。
「さーて、やるか」
困惑する私を余所に、あいつはさっきの顔が嘘みたいな明るい声を出すと、何かの格闘技の型を始めた。