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「うーん、誰かいないか?」
担任の桜庭先生がクラスを見渡すが、目を合わす女子は私を含めて誰もいない。
「こうも決まらんとはなー。せっかく早く終われると思ったのだが………」
肩を落とし、露骨に悔しがる桜庭先生。
とは言われても…私は『ミス陵桜コンテスト』と書いてある黒板をちらっとを見る。
無論ミスコンなんていうものは去年はなかった。
なんでも少子化対策の生徒数確保の一つとして、ミスコン開催が決定したらしい。
……でもこれって選ばれた人は完全に見世物よね………
「ああ、もう! この際他薦でも構わん! 誰か名前を挙げろ!」
桜庭先生は教壇を叩きながら怒鳴った。
「ほい、せんせ〜い」
その言葉に待ってましたとばかりに手を挙げたのは日下部だった…なんだろ、嫌な予感がする………。
「うちのクラスの代表は柊がいいと思うんだ〜」
「なっ! おまっ!? ふざけんな!!」
私は思わず声を出して立ち上がる。
「よし、C組の代表は柊に決定!」
「先生ーっ!!」
あまりの強行決議に私は桜庭先生に抗議の声を上げる。
「ん? 柊は不満か?」
「当たり前です!!」
私は両手で机を叩く。
「ふむ…では皆に聞くか。柊がクラスの代表に賛成の者は手を挙げろ」
桜庭先生の言葉に私と峰岸を除くクラス全員が手を挙げた。
「そう気を落とすな柊。もしミス陵桜になれば男共が寄ってきて、選り取り見取り薔薇色の青春が送れるぞ」
「そんなの入りません!」
桜庭先生の言葉を私は力一杯拒否する。
それに私が振り向いて欲しいやつはもう決まってるんだし………。
「どうしても嫌だったら今日中なら辞退は認められてるぞ」
「えっ、そうなんですか?」
「この時間に誰か決めとけ、というお達しだからな。この時間を過ぎてからの辞退なら私の預かり知らぬところだ」
「…………」
桜庭先生のぶっちゃけ発言に唖然とする私。
「だから辞退するもしないもお前の自由だからな、好きにするがいい。じゃあ私は保健室でお茶を飲みに行くからな」
そう言うと、桜庭先生はいそいそと教室を出て行った。
「なあ、なあ柊」
「…………」
「怒るなって〜」
「黙って昼飯を食え」
「はい………」
「ねえ柊ちゃん本当に辞退するの?」
「当たり前よ! あんな見世物みたいなのはごめんよ!!」
「でも柊ちゃんが『ミス陵桜』になればあの人も寄ってくるんじゃない?」
私を見ながら峰岸は悪戯気に笑う。
まあそんな事も一瞬考えたけど………。
「あいつがそんなんで寄ってきたらこんなに苦労してないわよ」
私はそう言って軽く肩をすくめた。