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「どうしようかな、これ………」
何をかというと、私の机の上に置いてあるポッキーの袋、これである。ちなみに封は開いてしまっている。
ついついいつもの癖で勉強しながら食べようと開けてしまったんだけど………、つかさにあげちゃおっかな………。
「……でも開いたのあげるのも悪いし………、うん、ダイエットは明日からにしよ、うん」
♪ 悪循環はいけないよ♪
私が明日からのダイエットを強く決意して、ポッキーに手を伸ばした時に携帯が鳴る。
この着信音は………。
『かがみどうだ? ちゃんとやってるか?』
私が携帯に出てあいつの第一声がそれだった。
「あ、当たり前じゃない! 順調すぎて怖いくらいよ!!」
『お前、今お菓子食べようとしてただろ?』
うっ! 鋭い………。
「そ、そ、そんなわけないじゃない!!」
『かがみ、正直に言ったらオレはこれ以上は追求しないぞ』
「……はい、食べようとしてました! で、でもまだ口にはしてないわよ!?」
『はいはい』
携帯越しからでも私の言い訳に、あいつが笑いを噛み殺すのが伝わってきた。
「でもなんで私がお菓子食べるって分かったの?」
そんな事はないと思うけど、部屋にビデオカメラがないか私は思わず辺りを見渡す。
『そんなの分かるって、短い付き合いじゃないんだしな』
何気ない言葉だけど嬉しい。あいつは私の事分かってくれてるんだ…でも逆に私はあいつの事分かってる? 知ってるの………?
『……どうしたかがみ?』
今がチャンスじゃないかしら? あいつの事が分かるチャンス………。
「ううん、別に。ねぇ、あんたって毎日トレーニングしてるのよね?」
『ん? ああ』
「私も付き合っていい?」
『別にいいけど…なんでだ?』
「ダイエットにはやっぱり運動も必要かな〜と思ってね」
『分かった。それじゃ…ん? …………ワルイ、こなたが呼んでるから、続きは明日学校で』
「はいはい。あっ、こなたには………」
『分かってる。この件は内緒だろ?』
「うん、お願い。それじゃおやすみ」
『ああ、おやすみ』
プッ
……これでいい。ライバルは多いんだし、そんな一気に仲が進展するわけじゃない。
少しずつ少しずつ、あいつとの距離を詰めればいい。私はそう自分に言い聞かせた。