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「クソーかがみのヤツ、人をまるで覗き魔みたいに言いやがってー!!」
オレはかがみの代わりに閉め切られたドアに文句をぶつける。
「オレはみゆきが頼んできたからやってるだけで、お前のために見張りをするんじゃないっての!! ……ハァハァハァハァ…ったく………」
オレはひとしきり文句を言うと、ドアを背にして座った。
さっきの様子からすると、みゆきはもちろんかがみもオレをそれなりに信用してくれてるみたいだ。
だけどその信用はこの世界のものであり、元の世界でオレがしてきた事を知らないからだ。
……そうなると、やっぱりオレのことは話さないほうがいいんだろな。
元の世界にいた時の話をすれば、あいつらはきっと怯えてオレの元から去っていくだろう。
信じてた人に去られる、大切な人を失う。両方とも堪え難いものだった。
そしてアイツらに去られたときはあの時以上の喪失感を感じるかもしれない………。
自分でも弱気な考えだと思う反面、改めてオレの中でアイツらはすごく大切なところに位置する存在なんだと認識させられる。
「もう失いたくないんだ…何も………」
知らず知らずに頭はうなだれ、手に力が入る。
「なんやぁぁぁぁ!?」
オレは黒井先生の悲鳴に頭を上げた。
悲鳴を聞いたオレは立ち上がり、頭の中を切り替える。
ここで不用意に入るのは素人かギャルゲーの主人公。実戦から1年ほど離れているがオレは軍人、まずは状況確認からだ。
「先生どうかしたんですか?」
いつも通りの声を上げつつ、冷静にドア越しの気配を探る。
「な、なんでもない! し、心配するな!!」
「は、はぁ………」
不穏な気配は感じないし、黒井先生の言うとおりなんでもないみたいだ…おおかた虫か何かで驚いたんだろ…人騒がせだな。
オレは溜め息を1つして、再び腰を下ろそうとしたとき――
「そ、そんなー!?」
今度はみゆきの声。
「みゆき大丈夫か?」
オレは再び同じ行動をとる。
「は、は、はい、き、気にしないで下さい!」
こっちも先程と同じで不穏な気配はなし。
だがあの沈着冷静なみゆきが悲鳴を上げるなんてよっぽどのことなんじゃ………。
その時、オレの頭に仮説が生まれる。
オレに気配を悟られないほどの腕を持ったヤツが忍び込んだ、
もしくは、オレが鈍っていて気配を感じ取る事が出来なかったんじゃないのか? そしてそれはみゆき達を襲って――
「いやぁぁぁぁー!!!」
「かがみ!!!」
かがみの悲鳴を聞くとオレの体は勝手に会議室に飛び込んでいく。
正面
人はいない
右
こっちもいない
左
そこにいるヤツと目が合う
それはオレが知ってるヤツだった…それは下着姿のあられもない姿のかがみだった………。