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「ごめんね、面倒臭い事任せて」
放課後、私とみゆきは簡易身体計測会場こと、会議室に向かっていた。
「いえ、こちらが言い出したことですから、気にしないで下さい」
みゆきは本当に気にしてないのだろう、いつも通りの微笑をうかべる。
あんまり礼を言い過ぎると、みゆきを逆に恐縮させるだけなので私は話を元に戻す。
「二人だけだから準備が大変ね」
「いえ、黒井先生も手伝って下さいますし」
「やっぱり黒井先生も出るんだ………」
「はい、みたいですね」
噂には聞いてたけど本当だったんだ………。
「それに助っ人の方も頼みましたから、思ってるより楽だと思いますよ」
「助っ人? へえ〜奇特な人がいるもんね〜」
等と会話をしてるうちに私達は会議室に着いていた。
会議室の前にはすでに二人いて、何やら話をしながら待っていた。
一人は黒井先生、もう一人は男子だけど…まさか、まさか………。
「おっ、きたきた。みゆき、中の方はもう出来てる…ってあれ? かがみなんで――」
「なんであんたがいるのよー!?」
言葉を遮り、私は悲鳴ともとれる声を出しながらあいつを指差していた。
「なんでって…みゆきに頼まれたからな。
それよりかがみこそなんで…ああ、そうか」
少し考えた素振りをしてあいつはにやりと笑う。
まずい! あれは完全にからかおうとしてる顔だ!
「いや〜かがみ様が出場すればミスコンなんて楽勝だろ〜」
私の予想とあんまり変わらない言葉を吐くあいつ。
もちろん予想が当たったからって全然嬉しくないけど………。
「みゆきー! なんでこいつに頼んだのよ!?」
「え!? な、何か不都合があったのですか?………」
私の言葉に心底驚くみゆき。
そうだったー! みゆきも天然なところがあったんだー! ……といってこのまま引き下がる訳にはいかないので私は猛然と主張を始める。
「だってこいつ男子よ!? 覗かれるかもしれないじゃない!?」
「オイ!?」
後ろで何やら抗議の声が上がったが、無視して私は主張を続ける。
「あ、後、ひ、ひょ、ひょっとして、お、おそ、襲ってくるかもしれないし………」
「ちょっと待て!!」
「シンさんはそんな事なさいませんよ。かがみさんもそれはご存知だと思いますが?」
「うっ………」
みゆきの笑顔のカウンター攻撃に私は小さく呻く。だけどここで引き下がるわけにはいかなかったので、
私は気力を奮わせみゆきを説得する。
「で、でも、ここからは男子はいらないし、シンにはもう帰ってもらって………」
「いえ、これからシンさんには変な人が入ってこないように見張りを頼んでいます」
私の最後の一矢は笑顔の盾によって完璧に防がれた。
「ええやないか柊。アスカはそういうところはウブな奴やから大丈夫やろ。
万が一アスカが覗いてきたらウチがどうにかしたる」
そう言ってって八重歯を覗かせなが笑う黒井先生。
「だとさ、これで安心だろ?」
先ほどからいつも以上に無愛想な顔になってるあいつが、私を睨みつけてくる。
「わ、分かりました、黒井先生がそう言われるなら………」
私はあいつを見ずに黒井先生の方を向きながら、渋々ながら頷く。
「いい? ぜーったいに覗かないでよ!?」
「いいかげんにしろ! そんなにオレが信用できないのかよ!?」
私の念押しに、あいつは唸りながら言葉を返す。
「そ、そういうわけじゃないけど…」
あいつの燃えるような赤い瞳に見つめられ、照れも相まって私は口ごもる。
こういうのもなんだけど、私はあいつが思っている以上にあいつを信頼している。
……でもあいつって今まで故意で覗きとかいう類はしなかったけど、不可抗力で似たような事したしなー………。
それにやっぱり、あいつの近くでドア越しとはいえ身体計測するのは恥ずかしい………。
「と、とにかく! あんたはここで大人しく見張りしときなさいよ!!」
「なんだよ!? そ――」
ぴしゃ!
私はあいつが言葉を返すのを待たずにドアを閉めた。