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自分が理想の妻、母親だなんて思っちゃいない。
それどころか自分の母親と比べて、いかにどちらとしても足りていないかと痛感させられる日々。
そんな私が理想の母親とは滑稽だ。
いかに私が夫であるシンや妹、友人に助けられているか、抗議の一つもしたいくらいである。
「不満はない、だって」
痛みにこらえて生み出した息子に私は語りかける。
ただそんな私でもシンはいつも隣にいてくれる。
会えなくなる日や喧嘩したりする時もあるけど、シンはちゃんと私を支えてくれるし、私もそうでありたいと思ってる。
「ままー」
「ああ、ごめんごめん」
そしてれいも今はいてくれる。
だから私は頑張っていける。
なるほど、確かに記事を気にする必要はない。
私達にとっては何も変わらないことなのだから。
がちゃ
家の鍵が開く音。
夫が帰ってきたらしい。
「おかえり〜」
「ただいま」
ガンプラを一刻も早く作りたいからの帰宅、ではないのは顔を見たら分かる。
だけど、売り切れというわけではないみたいだし………?
「どうしたの?」
私の問いに、シンは怒気を向けた眼差しを向けてくる。
普通の人からしたら戦慄するくらいに怖いが、私にとってはもはや慣れた以上のもの。
ましてやこの怒りは私に向けられたものではないのだから、別におののく必要もない。
そしてシンは無言で薄い新聞紙を差し出す。
「ああ〜社内新聞。あんたのとこってハイテクなのにローテクよね」
私はれいと交換で新聞を受け取る。
全部で四面しかない新聞なので、シンの怒りとする記事はすぐにみつかった。