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「ふ〜ん」
記事の内容は、まあなんというか…同じ感じ………
シンがいかに優れたエンジニアで、いかに良き家庭人かというもの。
「なんだよこれは!?」
「まあちょっと違うって気はするけど」
「全然違うだろ! というか捏造レベルだぞこれ!?」
「捏造って」
「くそっ、最初と最後をくっつけるみたいなことをしやがって!」
さっき私に言ったことは夫の中ではもはや忘却のかなたらしく、なおものたうちまわっている。
確かに文章を見たら、シンの価値観や考え方とは違った内容だし、
見る人が見たらシンが言ったことではないということが分かる。
ただわざわざそんなに怒るほどのものではないと思うけど………
「いいじゃないの、何が不満なの?」
「……俺一人の功績みたいになってるのが!」
「はあ?」
シンが良き夫であり、父親であるということは間違いではない。
家事や育児だってするし、仕事もできる。
完璧は言い過ぎだけど、充分すぎるほどである。
「かがみやれいがいてくれるからなのにさ」
あっ――
「きゃっ、きゃっ!」
私が何かを言う前にれいが笑う。
まるで私とシンを両方見比べるように
「参ったな」
「二人とも親としてはまだまだね」
シンも同じことを思ったのだろう、私に苦笑を向けてくる。
分かっているはずなのについつい忘れてしまう
自分が思ってる自身の不甲斐なさは、あっちも同じく抱いてるということを
だから何度も何度も何度も何度も、私達は勝手なすれ違いを起こす。
本当に嫌になるくらいに
「でもシンはよくやってくれてるわよ」
「かがみもな」
でも嫌にならない
でもできれば息子のれいには、こんな面倒くさい人を見つけて欲しくないとは思うけど
〜 F i n 〜