ジリリリン



 次に私が目覚めたのはセットした起床時間。



「う〜ん」

 隣でもシンの起きる合図の小さな声。

 私はそれをきっかけに目を開ける。

 そして自分の胸に添えられているシンの手を発見する。



「おはよ、かがみ」

 少し寝ぼけ気味の暢気な声を上げるシン。

 起きてる!?

 当たり前のことを寝ていた頭が認識し、沸き上がってくるのは胸を揉まれているという羞恥心。



「この………」

「ん?」

「スケベシン!!」

 私の平手打ちは私を完全に目覚めさせたのだ。



「朝っぱらからいきなりどつくことないだろう!?」

 ベッドに突っ伏したシンはすぐに反論の為に顔を上げてくる。

 他の人からすれば凄い剣幕だけど、私からしたら寝顔以上に見慣れたそれは怯むのに値しない。

「はあ!? 人の胸を朝っぱらからおもちゃにしといて、言うことがそれ!?」

 だから私もシンの方に顔を近づけて反撃する。



「なに言ってるんだよ! こっちはずっと寝てた! 無意識のもんだ!!」

「無意識だったらなにしても言いわけじゃないでしょ!?」

「だからっていきなり殴っていいのかよ!?」

「殴らないとスケベは分かんないのよ!」

「オレのどこがスケベだよ!?」

「全体よ! 頭の上から爪先まで!!」

「なんだと!? バッカガミ!!」

「その名で呼ぶな! スケベシン!!」

 ベッドの中、キスをするくらいの距離で口ゲンカをする私達。

 もっとも全くロマンチックな会話じゃないけど。



「ふん!」

 鼻息を出してシンはベッドを出て行く。

 どこにとはわざわざ聞かない、朝飯の準備だから。

 もちろん二人分、ケンカしててもシンはちゃんとそういうのは作ってくれる。



「ふん!!」

 そして私の向かう先は洗面所、女の朝は色々と忙しい。



 バタン



 洗面所のドアを勢いよく閉めて



「はぁ」

 鏡を見て溜息。



「またやっちゃった〜」



 どうしてシンが『起きてる』って分かると、あんな反応をしちゃうんだろ?

 やり過ぎって自分でも思ってるのに〜

「バカバカ、も〜私のバカ!」



 本当にこの性格が恨めしい





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