洗面所から出てきたかがみは無言で席に着く。

 これは完全に怒ってる。まあ無理ないけど



 オレの持つ忌まわしいスキル『パルマ』、かがみが彼女になってからは、

かがみにしか発動しなくなってるけど、かがみからしたら何も変わっちゃいない。

 オレだってかがみに同意もなく胸を触ることなんてしたくない。



「ふん」

 悪いのはオレ。それでも素直に謝れないのは、きっと負けず嫌いなこの性格だから。なんとかしたいとは最近つくづく思う。



「これってご機嫌取り?」

 かがみの言う通り、朝食はかがみの好きなものを用意した理由はソレ。

 それなのに

「違うね、たまたまだ。勘違いするなよな」

 かがみの言い方がバカにした様なのもあったから、自分でも突き放す様な言葉。

 違う、言いたいのはそんなんじゃない! というか余計に悪化してるだろ!? 

 かがみの目は完全に三日月目になってる。



「フン」

 それでも謝らない自分は完全に意地になってるとしか言いようがない。

 仕方なくオレは朝飯を口に運ぶ。



「いただきます」

 少し遅れて、静かに言うかがみ。

 もちろんその声は怒りモード。



「あっ、おいしい」

 その呟きに顔を上げると、そこにはさっきまでと違って、笑顔のかがみ。

 その笑顔をオレは、息をするのも忘れて見ていた。

 本当に美味しそうに、それでいてその笑顔はオレに笑いかけてるような気がした。



「あっ………」

 そんな顔を見られたからか、それともケンカの真っ最中を忘れてしまっていたからか、

かがみは真っ赤になって顔を伏せる。顔だけじゃない耳もだ。

 それは普段の大人っぽいかがみとは違って、幼く見えるけどそんなかがみは可愛い

 そんなかがみを知ってるのは、オレだけかもしれない



「だろ?」

 からかいを入れずにそんな言葉が自然に出せた。

 意地とかどうでもよくなった、かがみのこんな姿を見せられたら。



「……うん………」

 もはやかがみも怒ってるのがカッコ悪いと思ったのか、真っ赤なまま小さく頷く。

 すっごく抱きしめたいけど、今やったら絶対に怒るよなー



 でも

 いや

 でも

 いや

 でも

 いや



「ねえシン」

「は、はい!?」

 葛藤中の為動揺しまくる声を上げるオレ。

 再び笑顔のかがみ、でもそれはオレのそんな姿を見たからじゃないだろう。

 その笑顔には明るい、嬉しい、楽しい、そんな純粋なものしか付いていないから。



「ご飯食べたら、どっかに行かない?」

「……ああ」

 今度はオレの姿を見てかがみは笑った。



 さっきよりも明るく、嬉しく、楽しそうに





〜 F i n 〜   






戻る        別の日常を見る