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いつもの集合場所で私は手に持ってるラノベを握りしめながら、あいつが来るのを待つ。
仲直りでこんだけ時間が掛かったののは久しぶり、ケンカの主な理由も覚えてないし、下らなさでは今回が一番かもしれない。
でもそれももう終わり、今日ここで!
「おはよう、シンちゃん」
「っはよ」
きっかけは思ったより早く訪れた。あいつと私はあっさりと目が合った。
つかさの次は私。ケンカしていてもあいつは無意識的にそう思ってるんだろう。
しかしあろうことか、肝心の私が言葉がでてこない
なんで!? どうして!?
ちょっとだけの間があって、あいつはきびすを向いて行ってしまう。
いきなりの失敗。昨日までだったらこのままズルズルと一日が過ぎるけど、今日の私には切り札がある!
一歩、二歩、三歩と大股で進み、あいつに並んで、手にあるラノベを差し出す。
そして言うんだ!
……なにを?
「ん」
「ああ」
結局出した言葉は、とてもきっかけになるのとは程遠い本当に一言だけ。
そして案の定あいつは短く頷くだけで、一歩、二歩、三歩と前へ行ってしまう。
もう走ってでもしないと追いつかない距離。
……うそ………
切り札はあっさり、本当にあっさり無くなってしまった。
こんなことは全く想定していなかった。
あれさえ差し出せば、またいつもみたいに私とあいつは話しができるはずだった。
だけど違った、何もできなかった
というより、ひょっとして、私がそう思ってるだけであいつは本当に怒っていて、私を許してなんかいない………?
遠くなっているあいつをぼんやりと見つつ、私は負の思考のスパイラルにはまっていった。