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ケンカの最中というのに、オレもかがみも登校時の集合場所にちゃんとやってくる。
オレ達の仲が険悪というわけではないのはそこからも分かる。
だから今のケンカが長引いているのは、話すきっかけがちょっと上手いことできてないだけだ。
「おはよう、シンちゃん」
「っはよ」
つかさに挨拶をした後、何気なくかがみに一瞬だけ目を向ける。
だけど、かがみは何も言ってこない
何してるんだよ、声を掛けてこいよ
仕方なくオレは学校に向けて歩を進める。
1歩、2歩、3歩と進み、横から手が出てくる。その手にはラノベが握られていた。
これは以前かがみから借りたタイトルで、恐らく新刊。
そういえば出たら見してくれって言ったっけ
「ん」
「ああ」
1言の後に差し出されたラノベをオレも1言だけ頷いて受け取る。
そして再び1歩、2歩、3歩。
オレとかがみの距離が着実に空いていく。
…………。
マズイだろ!? 違うだろ!?
言うことはあるはずだ、でもそれが出てこない
なんだ? オレはかがみと普段どうやって会話をしてたんだ?
ケンカばかりしてたか? いや普通に会話していたはずだ。それこそMSを動かすよりも簡単に
だったらどうしてだ? なんでかがみとどう話していいかわからないんだよ!?
そんなバカすぎることを考えている間に、オレはかがみと会話できないほどの場所に着いていた。