「それでさー…あっ!」

 昼食中、ついつい興奮して身振り手振りを加えて話していると、手から片方の箸がすっぽ抜けた。



 パシッ



 綺麗に中を舞う私の箸をあいつが難なく捉える。

 さすがに運動神経は抜群である。

「行儀悪いぞ」

「ふんっ!」

 小馬鹿にしたような態度で、箸を差し出してくるあいつから私は奪うように取って、何事もなく昼食の続きに入る。



 あいつとケンカして二十九時間と三分。

 それ以来私とあいつは話しもメールもしていない。

 今回のケンカは少し長めである。

「の割に、かがみもシンも一緒に食べるんだね〜」

「つかさとみゆきとお弁当に食べに来てるの」

「こいつとじゃないからな」

「あの〜わたしは?」

 こなたの疑問を私もあいつも示し合わせたかのように無視する。



 もちろん本気であいつに対して怒っているわけではない。

 そりゃあ最初は頭に来たけど、出した課題をやってこなかったのはあいつにも事情、きっと過去に対する何かが原因だろう。

 それくらいのことは理解しているつもりだ。

 だからといって私の方から謝るのは、ちょっと………。あいつすぐに調子に乗るし



 何気なくあいつと視線が交わる。

 ちょっと! その捨てられてるのに、必要以上に強がってる子犬の様な目はやめなさいよ!

 私は少し大げさに首を横に向ける。

 冗談じゃない! あんな目されたら、私にもの凄い罪悪感を抱かせる!



「フンッ!」

 あいつがわざとらしく、音を立てて立ち上がる。

 いかにも声を掛けて欲しそうなその態度が私の負けず嫌いを刺激する。



 ここで私から話したら絶対に負けだ!





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