機嫌の悪い日ってのはあるもんである



 体重が増えたり

 送られてきた模試の結果が前回より下がっていたり

 あの日だったり



 という理由から日曜の次の日私の気分は最悪だった



「ちゃんとやってきたんでしょうね?」

 でもそんな気持ちを抑え、私はあいつに声を掛ける。

「やってるかよ」

 でも帰ってきたあいつの答えは、私の不機嫌さを刺激させる攻撃的なものだった。

「はぁ!? やってない………?」

「ああ、やってないね」

 挑発するようなあいつの物言い。

 こんな言い方をするあいつは久しぶりだった。



「あんた、何してたのよ!?」

 でもだからって、それが腹立つことには変わりはなかった。

 視界の端で、つかさとこなたがまたかといった様子で私達と距離を取るのが見えた。



「ちゃんとやれって言ったでしょ!? 何してたのよ!?」

 私の追求にもあいつは黙ったまま。

 何か理由があるならちゃんと言えばいいのに、そうやって黙るから余計にいらいらさせられる。

 それでいつも私は迷惑してるってのに



「遊んでる場合じゃないのは分かってるでしょ!? 受験生なのよ!?」

「うるさい!」

「うるさくないわよ!」

「いい加減にしろよ!!」

 シンの冷たい声に、私は体をぴくりと震わせる。



「あんたはオレのなんだ? 母親か!?」

「そ、それは………」

「ちょっとばっかし、オレのことを知ったくらいで分かった気にならないでほしいね!」

「っ!」

 頭をとんかちで殴られたような衝撃。目の前が一瞬真っ白になる。

 そして次に来たのは怒りだった。

 事実の部分は確かにあるけど、私はあいつの少しでも役に立ちたいと思ってただけなのに

 悔しかった

 だから言葉がついつい出てしまった。



「じゃあ、じゃあ! ……勝手にしなさいよ!! 勝手に元の世界にでも帰ったら!?」

 そして言ってから気付いた

 自分が言ってはならないことをいってしまったことに



 こんなのはただの八つ当たり

 あいつが自分のいた世界をずっと気に掛けてるのは知っていたはずなのに  



「それができたらとっくにやってる! こんなくだらないところにいるもんか!!」

 私が何かを言う前に厳しさを増した顔で、あいつはそう吐き捨てる。

 でも怖くもなんにもなかった。

 後悔がふっとんで次に生まれたのは怒り



 …………



 こんなくだらないところ?



 あいつはそんな風に思ってたの?

 私が住んでるここを?

 私が大好きななここを?



 あいつとは違う道路を隔てた歩道へ私は渡る。

 そしてそこから学校を目指す。



 いくらあいつでも今のは許せない

 もう当分は顔も見たくない! 





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