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 学校を追い出された私とあいつは、帰宅を余儀なくされた。

 とはいえあのままあの場にいても、良くてあのままでしかないだろう。

 事態は深刻。そう思ってるのは私だけであいつの方では、すでにもう終わってるかもしれない。



 そんなことはない

 私は負の考えを否定する。

 さっきのはこなた達が、私とあいつを仲直りさせるために建てた作戦だったはず。

 それをしてくれたのは、私と同じかそれ以上にあいつを理解してる皆が私達の仲は修復可能と判断したのだから、まだ芽はあるはず。

 推論に推論を重ねる、こんなの弁護士どころか三流探偵である。



 今の一連の考えを言えば、あいつはどんな反応をするだろうか、きっと私をバカにするだろう



 もう頭の中でしか、あいつと話すことはできないのだろうか



 そんなのいやすぎる



「かがみっ!」

 あいつの言葉と同時に、私の足は空を踏み穴に落ちる感覚に捕らわれる。

でもそれも一瞬だった。私はあいつに引き寄せられてその胸の中にいた。

 どうやら私は土手から滑り降ちそうになっていたらしい。

 いつもの帰り道、それこそ目を瞑っても歩ける場所なのに、私はよっぽど思考の鎖に引っ張られてたらしい。



「大丈夫かよ!?」

 少し見上げるとあいつの顔はもの凄く真剣な顔だった。

 本当に心配してくれる顔だった。



「大丈夫、ありがとう」

 そんなあいつの顔に、私は素直に言葉が出た。

 ケンカ中だった私の行動が意外だったのか、あいつはちょっと目を開け、驚いた顔をする。

「じゃあよかった、あまりの重さに地面が抜けたかと思ったぞ」

 でもすぐに、皮肉が混じった笑みを浮かべたよく見るあいつの顔になる。



「なんですって!」

「本当だろうが」

 私の反撃を読み、あいつはわざとらしく大きく一歩下がる。

 睨む私に挑発的な視線のあいつ。

 本当にいつの間にか、いつもの私達になっていた。

 今までできてたことができなくなって、今できた。



 理由はきっと



「ごめんね、八つ当たりでひどいこと言って」



 当たり前のことを言ってただけ





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