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今みたいに微妙な距離を保ちつつオレとかがみは帰路を歩いていた。
最後のオペレーションも失敗に終わった。
その割にはオレとかがみの決裂が決定的になったわけでもなく、中途半端な結末になっていた。
だからこそオレは次のきっかけを考える方へ向かうことができた。
ただその為には、なんでこんなにもこじれたのか、その理由が分からなければいけないんだけど、全く分からない。
かがみと話をすればそれも分かるかもしれないけど、それができたらこんな事で悩まなくてもいいはずだ。
と前を歩くかがみを見ると足取りが怪しい。
まるで周りが見えてないんじゃないか
そう思うと同時に嫌な予感がしたオレはかがみとの距離を詰めていた。
「かがみっ!」
かがみがバランスを崩すのと、オレがかがみの手を掴むのはほぼ同時だった。
オレは力を入れてかがみを引っ張り、衝撃を自分の体で受け止める。
「大丈夫かよ!?」
こっちを見上げてくるかがみは何が起こったか分からずに呆けた表情をしていたけど、すぐに自分が起きたことを理解したらしい。
「大丈夫、ありがとう」
お礼を言ってくるかがみの顔は、聡明さを表す凛々しさと女の子特有の柔らかなものが同居したものだった。
「じゃあよかった、あまりの重さに地面が抜けたかと思ったぞ」
あまりにもかがみの向けてくる笑顔が魅力的で、でも見るのが恥ずかしくてオレはついつい軽口を叩いてしまう。
するとかがみの顔はツリ目がよく似合う、勝ち気ないつものかがみにたちまち戻る。
「なんですって!」
「本当だろうが」
オレはなおもおどけた調子でかがみから一歩下がる。
アレ? これっていつものオレ達のやりとりじゃないか?
どうしていきなり戻れたんだ?
考えるオレを余所にかがみが口元だけ笑ったのが見えた。
「ごめんね、八つ当たりでひどいこと言って」
今度は顔全体に笑顔を浮かべてかがみはそう言ってきた。
それは笑ってるのに冗談には全く聞こえなくて、心からそう思ってるって感じさせるものだった。
やっぱりかがみは違うよな
オレじゃ到底分からないことが分かってて、オレに教えてくれる。
「オレの方こそ、ごめん言い過ぎた」
ここまできてようやく言いたいことが言葉ででてきた。
「好きなのにな」
「えっ?」
「この世界が、かがみ達に会えたこの世界がオレは好きなのにな」
「あ、ああーそういう意味か」
オレの付け足した言葉にかがみは苦笑い。
フン、どうせオレはかがみみたいに物分かりが良くないからな!
「まあいいさ、明日からだな」
「うん、明日から」
『またケンカするから』
〜 f i n 〜