「こ、声が大きいぞ、あんた!」

 周りに頭を下げた後、あいつは非難の込もった眼差しを向けてくる。

「ごめん、でも本当にいいの?」

 いつもなら、ここで喧嘩に発展するところだけど、それどころではない

 私は小声であいつに念を押す。



「ああ、ザフトレッドに二言はない! でも、オレの出来る範囲の頼みごとだぞ」

 なんかよく分からないのに賭けられてるけど、あいつの口ぶりからすると本気らしい



 何を頼む?



 そりゃあいつに頼みたいことはたくさんある

 でもそれがありすぎて、一つだけというのは逆に困ってしまう



 何をしたい? あいつと何を?



「じ、じゃあ、じゃあ、イブにどっかいかない?」

 言ってから、私の中では時が止まったように感じた

 な、な、何を口走ってるんだ、私は!?

 イブに二人っきりなんてあれだ! そう! まるで恋人同士じゃない!?

 そりゃ、私はあいつのことが………、でも物事には順序があって、それに今の私とあいつの関係はただの友人。

 なのに、二人でイブにデートなんて………、三段、いや五段くらいすっ飛ばしてる!!



 さすがにない! というかあっちが断ってくるし!

 そうしたら、もう後は警戒されて………

 いやーっ! だめ! 絶対それはだめーっ!



「なんてね〜アハハッ―――」

「うん、いいぞ」

 私のフォローともいえない言葉は、あいつの言葉によって引っ込んでいく。



 ……え?



 今、『いいぞ』って言った?



 なにを?



 うそ?



 意味わかってる?



 改めてあいつを見ると、頷いてきた、ということは………



「ホント!!!!!!!!!!!!?」

 私の絶叫が図書室に響き渡った





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