「ということで頼む! かがみ! 日本史教えてくれ!」

 だらだらと流れが見えない話をすること十分弱、結論と共にあいつが私を拝み出す。

 勉強を教えるという内容はどうあれ、あいつといる口実をあっち側から提案してきたのだから、悪い話ではない。



「いいけど、なんで私なの? 同じクラスなんだから、みゆきに頼んだら良かったんじゃないの?」

 あいつは勉強のことは私に尋ねてくるところが多い。

 でも成績的にはみゆきの方が上だし、教え方も私とあいつだと喧嘩に発展してしまうことも多々ある。

 それなのに私に聞いてくるということは………

「みゆきさんはいい人すぎて頼みづらいっていうか、なんていうか、分からないか?」

 誰かさんと同じ様な答えが私の幻想を一瞬にしてぶち壊す、あいつ。

 もはや定番とはいえ、傷つかないというのは嘘になる。



「なんとなく分かるけど、なんか納得出来ないわね

 まあいいわ、じゃあ明日から放課後図書室でやりましょ」

「ホントか!? 助かる!」

 とはいえこの程度の傷は、あいつと放課後二人っきりになれるという事実と、あいつの嬉しそうな顔で治るには十分なものだった。





 そして翌日の放課後、私とあいつは人が少ない図書室で関係する本を広げながら、勉強を始めた。





「何とか分かってきたな。ありがとな、かがみ」

「礼なんていいわよ」

 あいつのお礼の言葉にも、私はぷいっと明後日の方を向き、素っ気無く答える。

 こんな態度を取ったら、怒ってるとあいつに思われてしまう。悪い癖だとは自覚しているものの、全く治る気配がない。

 そして案の定、あいつは難しい顔をして考える。



 これであいつの方が気を遣い始めて、これから聞いてこなくなったら、どうしよう

 ただでさえ私は違うクラスで機会が少ないのに………



 でも、少し前のあいつならこんな顔はしなかった。

 自分の言葉で人が傷つこうがお構いなし

 そう思うとあいつの中で、私は少し他の人とは違う存在になれているのだろうか?



「そうだ! お礼にかがみの頼みごと聞いてやるぞ」

「だからお礼なんていいって………、えっ? ……ほんと!!?」

 思ってることとは全く違い、なおかつ嬉しい提案に私は思わず大声を上げてしまった。





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