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「……巫女って、――よな」
シンがぼそりと言った言葉が私の耳に入る。
私は読んでいたライトノベルから頭を上げてテレビの方を見ると、そこには何やら巫女の格好をした女性が何人かが映し出されていた。
さっきの呟きから推察すると、シンは巫女に興味があるらしい。
といっても何度か家の神社の手伝いもしてるし、巫女なんて今更な気がするけど………。
「なあ、かがみお前もできるのか?」
わたしが再びライトノベルに視線を戻すと、シンが今度ははっきりと私に尋ねてくる。
その声は少し期待が込められている。
でもなんの期待? 巫女姿なんて見慣れてるだろうし………。
『男ってさーコスチュームプレイが好きでさー、私の彼氏も―――』
ふと大学の友人が話してた言葉が脳裏を駆ける。
男は大なり小なりそうらしい。
という事は
シンは私とそんなプレイを望んでいるーっ!?
「なあーかがみどうなんだよ?」
いやいやいやいや、それはいくらなんでも恥ずかしすぎる! いくらシンとでもそれはできない!
そもそも巫女服を家から持ち出すのが無理というもの、あれは一応神聖なものだし………。
で、でも
それをしたら、シンは喜んでくれるのかな………?
シンにはつらい過去の経験があるし、それを忘れて生きていけ、なんて事は言えないけど、
せめて私といる時は幸せな気持ちになってほしい。
私の中で日頃全く信じていない家の神様と、大好きな人の喜んでくれる姿が天秤に掛けられる。
「で、できない事はないわよ………」
「ホントか!? すごいな!!」
「べ、別に、た、大した事じゃないわよ………」
予想通りといおうか、なんというかあっさりと私は目の前の存在する人物の方を取った。