「さてと………」

 晩飯も食べ終わり、俺が自室で明日の仕事の準備をしていると――



 こんこん



「とうさん、いい?」

「ああ」

 れいがこの時刻に俺の部屋に来るのは珍しい。

 大概れいはこの時刻テレビを見てるか、ゲームをやってるはずなんだが………。



「ねえ、とうさん?」

 部屋に入って来るなり質問するれい。声の様子から真剣な質問らしい。

「なんだ?」

「とうさんとかあさんって仲悪い?」

「はぁ?」

 余りの突拍子のない質問に俺は怪訝な顔で息子を見る。

「なんでそう思うんだ?」

「だって、とうさんとかあさん毎日けんかしてるし………」

 毎日は言い過ぎだろ…かがみと俺は仕事が忙しくて会えない日もあるから、顔を合わせればの間違いだ。

 いや、そんな事りもここは誤解を解くべきだ。



「いいか、れい。父さんと母さんは仲なんて悪くないぞ」

「じゃあなんで喧嘩するの?

 友達に聞くとさ、他のとうさんとかあさんは喧嘩しないって」

「そ、そうなのか?」

「それに先生がけんかはよくないことだ、っていってたぞ」

「それはそうなんだけど…父さんと母さんのケンカは…その…なんだ………」

 頭で分かっても説明するのは難しい、これが今の典型的なパターンだ。

 かといって適当な事言っても、れいは納得しないだろうな、俺とかがみの息子だけあって頑固だしな〜………



「……そうだな…父さんと母さんがケンカするのは…会話してるんだよ、お互いの事を」

「なにそれ?」

 分からないって顔のれい。

「簡単に言うと、俺達はあのケンカでお互いの事がわかるんだ」

「とうさん、おれをばかにするなよ」

 れいは半裸目で俺を睨み付けて来る。

「ホントだって! まあ人間なんだし全部わかるのは無理だけど、だいたいの事は分かるぞ」

「じゃあ、母さんが何を思ってたのか言って見てよ」

 疑惑のまなざしのれい…全然信用してないな、こいつ………



「うーん、そうだな。

 あの様子だと、仕事は順調。早く帰れてれいの顔が見れて嬉しい。でもって今日は食べ過ぎたから体重が少し心配ってとこかな

 後は………」

「もういい! ……うそいってないよね?」

「言ってない」

「かあさんに聞いてきていい?」

「どうぞどうぞ。でも俺がそう言ったて言うなよ?」

「なんで?」

「今更だし、当たってても自慢にもならないからな」

「……わかった」

 納得してない顔で出て行くれい。

 まあ、かがみの事だからバレるとは思うけど

 だいたい俺が今日予想外にかがみの顔見れたのが嬉しいってのもバレてたみたいたしな………。



「……これって冷静になると、かなり恥ずかしいな………」

 俺は一人で顔を赤くしていた。





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