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オレは自分が向いてる方向とは逆の方向から来る感覚に思わず手を止める。
そしてその方向を振り向く。そこに菫色のロングの髪をした女性が泣きそうな顔でオレの手を握っていた。
そしてその痛いほど握ってくる手から伝わってくる想い。
また泣かせたな。
こいつを泣かせたのは何回目だろうか最早覚えていない。
付き合ってからもそうだし、付き合う前からよく泣かせていた。
嬉しい涙、悲しい涙、こいつの涙は沢山見てきたけど、その原因の大半はオレにあるんだから、我ながら呆れるばかりだ。
それなのにこいつはオレの元にずっといてくれる、そしてこれからも………。
ふとあの人達のいた方に目をやるとそこには姿がなかった。
ごめん、やっぱりオレは当分そっちに行く気はないよ。
あの人達の笑い声が聞こえた気がした。