7
「私帰るね」
私はシンの顔を見て告げる。
シンの顔にはもう鋭さも怖さも脆さもなかった。
自分が役に立ったのかどうか分からない。でもシンは何かを越えた気がした。
これならもう大丈夫。
私は確信すると立ち上がる。
「えっ? ……!!」
声を上げる暇こそすれ、私は手を掴まれて引き寄せられる。
「ちょ、ちょっと!?」
「かがみ、今日はここにいてくれ」
そう言うとシンは私を抱きしめる、その抱きしめ方はどこまでも優しいものだった。
「かがみと一緒にいたいんだ」
私は今日は泊まる気がなかった。
今日はシンの事が心配だったから来ただけだし、ただ傷を舐めるだけの行為をシンとはしたくなかった。
でも、今のシンは私を必要としている、勿論前向きな意味で。
とはいっても今日は私は日付が変わる頃には帰ると言ってるあるし………。
「本当にいいの? 今のあんたは格好のからかい材料よ」
「それでもいい」
私の軽口にシンが真顔で頷く。
ずるいわよ…そんな顔されると弱い私は拒否できないじゃない。
「しないわよ、そんなこと。
でもいーい? あんたが言ったんだからずっと一緒にいるわよ」
「ああ!」
シンは証拠とばかりに顔を近づけてくる。
しかし私はシンの唇が届く前に自分から口づけをする。
気付いてるのかしら?
一緒にいるってのは今日だけじゃないってことを。
鈍いシンのことだから、恐らく気付いていないだろう。
でもそんなことは気付かなくていい。一緒にいるというのは私が勝手に決めたこと。
でも忘れないで、私はずっとあなたの側にいるから。どんな事があっても。
私は抱きしめてるシンに心の中でそう語りかけた。
〜 F i n 〜