気付いたら、私は両手でシンの左手を握っていた。

 シンの目が少しずつ、遠くなっていたから、まるでどこかに行ってしまうかのように。

 私はそれを防ぐためにより強くシンの手を握る。



 そして気が付く。シンの全体が震えてる事に。



 そして気が付く。シンが泣いている事に。



 といっても、シンの体が震えてるわけではないし、涙を流しているわけでもない。

 ただシンの手から私の手にそれが伝わってくる。

 哀しみ、それはシンが今まで見せたことのない感情。恐らく、シンの心の奥深くに眠っているもので、今日だけそれが暴れだすのだ。

 だから今日のシンはいつものシンと違って―――



 違う



 私は心の中で自分の考えを否定する。

 この哀しんでいるシンも、シンなんだ。

 両親や妹を目の前で亡くし、色々な人を守れなかったシン。

 そこからシンは大切な人を失うのを極端に恐れた。



 この世界でもシンは大切な人が出来た。それが私達だった。

 シンは私達の笑顔の為に病的とも言えるくらい行動した。

 私はそれをシンの強さから来るものと思っていた。



 でも、今シンの哀しみに触れて分かった。あれはシンの弱さから来たもの。

 弱いから、失うのが怖いからシンは必死になっていたんた。

 でも弱いからこそ、今のシンがある。優しくて、必死に他人の事考えて、

それでいて素直じゃなくて、憎まれ口を叩いて、私の大好きなシンが。

 だから今私の目の前にいるいつもと違うシンもシンなんだ。

 ごめんね。今まで気付いて上げられなくて。



 でも、大丈夫、分かったから…あなたの哀しみが。そして私はここにいるから、ずっとあなたの側に…いるから………。





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