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オレは自分の右の掌をずっと見ていた。
別にそこに何かあるわけじゃない。
いや、元々はあったけど全てすり抜けていった。
それらはもう2度と取り戻せないし、触れる事も出来ない。
何も守れなかった自分。
失う度に思い知らされる喪失感、無力感。
もう2度とそんなものを感じたくないのに、皆がオレの側から離れていった。
ふとオレは見ていた右手を上に上げる。
そうすれば何かを掴める気がしたから。
握ってみる、何も実感がない。
当たり前だ。そこには何もないんだから…オレと一緒で。
「!」
手を下げたオレは、さっきまで手があった場所に人影を見かける。
それは絶対にここにいないはずの人達。
届かない人達、オレが求めていたもの。
それを見てその人達と過ごした日の思い出が次々に頭を過ぎっていく。
オレは再び手を上げる。今度は掴むのではなく、掴まれる様に。
だけどその人達はオレの手を掴もうとしなかった。
ただ顔は困った笑みを浮べて、オレを見ているだけだ。
その顔はオレが子供の時に駄々をこねていた時にする顔だった。
なんでだよ!? どこがわがまま言ってるんだ!?
重なる過去の自分の言葉。
答えはない。
いやないんじゃなく、聞こえないのだ、あの人達の声が。
オレが聞こえていないのが分かると、少女が笑う。
まるでオレの物を隠した時みたいに。
なんだよ、またイタズラか?
オレの疑問に少女が口を開くが、やはり聞こえない。
そして2人もまた笑う。
なんでオレだけ除け者なんだよ!? なんで………
オレは必死に手を伸ばす。その人達の側に行きたいために………。