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たまには自分を褒めてもいいかもしれない。
オレは大学の帰り道を1人で歩いてそんな事を思っていた。
朝の起きた段階では悪夢で起こされることはなかったし、どうにかなると思っていたが、やはり無理だった。
ピリピリする、他人の何気ない仕草が頭にくる。
6月15日
数年前の今日、オレは家族を亡くした。
誰が悪いというわけでもない、悪いのは戦争だ。
頭ではそうだと分かっている。オレだっていつまでも過去を引きずって歩いていく気はない。
ただ今日だけは…今日だけは湧き上がってくる、怒り、悔やみ、憎しみといった感情。
だれかれ構わず当り散らすことがなかっただけでも幸いだ。いや、単にオレのいつもと違う雰囲気に皆が引いていただけかもしれない。
だがそんなことは今はどうでもよかった。ただ、このままだと何かがオレの中で爆発してしまいそうだった。
いつもより長く感じる家までの道のりを歩いて、オレはようやく自分のマンションに辿り着いた。
そして、入口の近くに立っている人を見つける。
「えーっと、き、今日は講義が早く終わって、ひ、暇だったから………」
オレは何も答えずただかがみを見ていた。