『ここにいる』





 その日は祝日でもなければ、私とシンの二人の間の何かの記念日というわけでもない。



「お母さん、今日私遅くなると思うから」

 でもシンにとっては忘れられない、忘れてはいけない日。

「何々〜? かがみはまたお泊りですか? いいね〜ラブラブで」

 私の言葉にお母さんではなく、まつり姉さんがからかいを混じった声で返す。

「そんなんじゃないから」

「えっ、あ、そ、そうなんだ………」

 私の真剣な表情を見て、まつり姉さんは気圧された様に頷く。



 六月十五日



 その日になると、シンの様子が変わる。

 そう聞いたのは、親友であり、元恋のライバル達からだった。

 なぜそうなるのかは私は知っている。だけど、その変わる様は私は見た事がない。



 去年の今日は私とシンはまだ付き合っていなかった。

 ただ去年はその日に普段約束は絶対守るシンが、遊ぶのをドタキャンして驚いた事は記憶している。

 ただその日が過ぎればシンはいつものシンに戻る。別に放っておいてもシンは立ち直る。

 事前にシンに探りを入れてみたが、シンは苦笑して認めたものの、心配ないと優しく笑っていた。シンはそこまで弱くない。

 でも、私はそんなシンよりはるかに弱い。

 だから心配なのだ。シンがどうにかなってしまうんじゃないかと。





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