かがみの絶叫に改めて隣の人物を見やる。

 髪の色こそやや違うものの、目は共通して少しつり気味、

髪を下ろしたらかがみもこんな感じになるだろうと容易に想像できるくらいに風貌はそっくりだ。

 もちろん容姿もオレ達と同じ年の17歳といっても間違いなく、10人中10人は頷くだろう。

 にもかかわらずオレが目の前の女の人をかがみの双子の妹に見えないと言ったのは、まとっている雰囲気と、

オレ達2人の行動に微笑を浮かべて見ている様子は同じ年とは思えない程に落ち着いたものだったからだ。



 これなら双子の妹ではなくただの姉というのなら、オレもまあ納得は出来る。



「やだわ、アスカ君こんなおばちゃん見ても何も得しないわよ」

 少し恥ずかしげに笑う女の人、その仕草はとても若々しくて、とても自然なもの

 だけどかがみの言葉を否定しない。



「………本当に、かがみのお母さん?」

「やだわ、もう御世辞はいいわよ」

 女の人の言葉に、救いを求めてかがみの方を見るが、かがみは頭を抑えるのみ。

「いやいやいやいや!!!」

 オレは何度も何度も手を顔の前で左右に振った。





 こなたはこの世界では科学技術は進んでいないと言っていた。

 それはこの世界の全容をまだ良くは知らないけどこなたからの情報や、

その雰囲気からも頭が良さそうと分かるかがみが、あんな簡単な科学理論にポカンとしていた事からも頷ける。



 だけどそれは嘘だったんだ!

 この世界にも遺伝子を改良、コーディネーターの技術は存在していたんだ。目の前にその証拠となる人物がいる!

 しかもかがみの親という年齢とオレの両親から考えて、この美貌、この容姿、この人はかなりのコーディネートをしたに違いない!



「す、すみませんでした!」

 オレは顔を真っ赤にして、女の人に頭を下げる。

 いくらこなたがオレに誤情報を流してたとはいえ、さすがに今回ばかりはオレが失礼な事だったのは認めざるを得ない。

 その上知り合いのその母親を同い年と思うなんて恥ずかしいことこの上ない!



「……あんたもそんなこと思うんだ………」

 うるさいぞ! かがみ!

 とはいえ今ここで何か反論したら、それは恥の上塗りでしかない



「かがみ、間違いは誰にもあるものよ。私は全然気にしてないわよ、アスカ君

 改めて、柊みき、かがみの母です」

 かがみを嗜める様子は間違いなく母親の威厳があるけど、頭を下げて自己紹介する時の姿は少女の可愛らしさがある。



 どっちが本当の姿なんだ?

 どこまでが本当でどこまでが嘘なんだ?



「あっ、は、はい!

 シンです! シン・アスカ!」



 別の意味で、オレはこの世界に飛ばされた時よりも混乱したまま、

みきさん(おばちゃん、とは言うのに抵抗がありすぎる)に直立姿勢のまま、改めて挨拶を行なった。





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