29


 時間というのは、過ぎる時は本当にあっという間だ

 朝ご飯を食べ終え勉強をしようと、机の上にノートを広げたのが二時間程前。

 だけどノートに書かれている文字数はあまりにも少ないし、現にやっていない。

 原因は分かっている。数日前から異常に気になってるあいつが原因。



「ああーもう!」

 私は首を強く振り、邪心を追い払う。

 そう、もうすぐ試験だ

 今の中だるみといわれる時期にを頑張れるかが、来年の受験に繋がるのだ

 だから今は目の前の試験勉強にしっかりと腰を据えてやらなければ、せっかくの日曜日なんだし………



「今頃やってるのか………」

 本日は陵桜学校の編入試験、といっても対象者はあいつただ一人。

 あいつの学力を考えれば、余裕で合格どころか、学園始まって以来の秀才ともてはやされるかもしれない。

「それはそれで不味いわね、私の成績………」

 ここまで言って、またもあいつのことに考えがいってることに気付き頭を抱える。



「なんであいつのことが気になるんだろ?」

 私は黒くなっているノートの一部分に、書いては消している単語を書き込む。



 アスカ・シン



 この文字が目に入るだけで、心がざわつき、ひどく落ち着かない。

 ここまできたら、人より少しだけ強情な私も認めざるを得ない



 あいつのどこが、なんて全然分からない。

 だけどもう数日会っていないだけで、心臓を握られてる様なそんな苦しさに襲われてる。



 会いたい



 会いたい

 会いたい



 顔がみたい

 話がしたい



 認めたくない

 認めたくない



 私の中で抵抗運動が起きる。

 心のどこかで私は迷ってる、本当にこの気持ちは本物なのかと

 これらに認めさせるのは簡単だ。

 事実を突きつければいいだけ、揺るぎない事実を

 もし違えば、この想いは気の迷いだったということ

 どっちにしても気持ちの片は付く。



「よし!」

 私は書いた文字を消し、ノートを強く閉じて立ち上がった。





戻る   別の日常を見る   進める