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「な、なんでもないって言ってるでしょ!?」

 今度は一転して手を大きく動かしかがみはオレから距離を取る。

 これはなんでもないって言えるのか?



「と、ところでなんであんたがここにいるのよ!」

 オレがそう口に出そうとする前にかがみが口を開く。

 まあこれだけ怒鳴れるんだから本当に元気なんだろう

 当然、なぜか知らないで怒鳴られてるオレは腹が立つけどな



「陵桜学園に次の日曜日受験するからな。それの下見だ

 別にお前に会いに来たわけじゃないから」

 だからオレも少しだけ言葉を強くしてかがみに返す。



「あっ、そ、そうなんだ………」

 なぜか一転してしゅんとなるかがみ。

 ちょっと言い過ぎたか?

 いやいや元々悪いのはかがみの方だ

 ……でもやっぱり、ちょっと大人げなかったか?



「そうだシン、まだつかさを紹介してなかったよね?」

 などと考えてるうちに、こなたがかがみの横にいる女の子を、引っ張ってきた。



「つかさ、こっちはアスカ・シン。わたしの親戚でお父さんの叔父さんの、母方のお祖父さんの兄妹の孫の隣に住んでたんだよ」

 それはただの他人って言わないか?

「ひ、柊つかさです、あ、あの、その、よ、よろしく、お、お願いします」

 やたらとおどおどした様子で、挨拶をしてくる柊つかさ。

 というかこなたに対するツッコミはなしか?



「アスカ・シンだ。アンタが妹………、だな」

 わざわざ確認を取るまでもない、怯える様にかがみにすがりついてる姿を見たら、一目瞭然だ。

 とはいえこれほどまでに性格が違うと本当に双子か? と聞きたくはなるけど



「ちょっと、つかさを脅さないでよ!」

「ハァ? 挨拶しただけで、どこがそう見えるんだよ!?」

「もっと、フレンドリーにしろって言ってるのよ!」

 なぜか今日のかがみはやたらとオレに喧嘩をふっかけてくる。

 昨日のことで少しだけ仲良くなったって思ったのは、オレの気のせいだったのか?



「もういいわよ! 学校に来て、早くそういう事を学びなさいよ!」

「ハァ!?」

 それだけ言い捨てるとかがみはスタスタと行ってしまった。



「まあまあシン、かがみんはあれが仕様だから」

「ハァ?」

 呆然とするオレに対して、こなたは解説してやろうという気マンマンに鷹揚に頷く。



「つまり、好きな人にはついつい構ってほしくなる、いわゆるツンデレ

 いや〜わたしも日頃かがみんには似た態度を取られてるよ」

「はぁ………」

 かなり胡散臭げな解説だが、まとめるとかがみは親しくなっていくごとに、厳しくあたるってことか?

 それでいて友達想い

 なんだかややこしいやつだな………



「つかさー、こなたー、シーン、早く来なさいよ!」

 こなたと妹である柊つかさはお互いに笑い合うと、かがみの方に小走りに掛けて行く。

 でもこんな様子を見るまでもなく、かがみが好感をもたれるというのは分かる気がする。



 こんなやつが近くにいてもいいかな





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