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 シンの発言を聞いた私の顔といったら

 私はこれ程までに唖然という言葉が脳裏に浮かんだことはない。

 この男は何を自惚れているのか



「この前ので分かっただろ?

 ここじゃあオレの満足するものを教えてくれない」

 確かにシンが見せた知識は凄いものだった。それは認める。



「あるわよ」

「えっ?」

 そう、こいつには一番に学ぶべきことがあるというのに



「あんたはね、もっとコミュニケーション、人との接し方について学ばなきゃいけないわよ!」

 そう、それはこの年になったら普通ある程度は身に付けているもの。

 でもシンにはない。まるで他人なんかどうでもいいというその態度。

 私はいい。もう会うこともないから

 でもこなたは?

 何事にも動じない風にしてるけど、こなたはちゃんと人としての心があることを私は知っている。

 だからきっとこいつはいずれこなたを傷つける。



「なっ……? はぁ………?」

 私の答えを予想していなかったのか、それとも図星を付かれたからか言葉を失うシン。

 その様子は今までシンに対する鬱憤を晴らすのには、十分過ぎる程に愉快なものだった。

 若干のストレス解消とそして何より、友人の為、私はより一層言葉を強くする。



「そんな突っかかってばかりいると、周りから孤立していくわよ! 今の時点でそんなんじゃあ社会に出た時絶対に困るわよ!」

「か、関係ないだろ!?」

 突っぱねるシンだけど、さっきと違って全く迫力がない。

 どうやら多少は自覚があるらしい



「そんなんじゃあ、あんたの大切な人もいずれあんたの周りからいなくなっちゃうわよ」

「っ!」

 びくりと体を震わせ、下を向くシン。

「…………」

 そして全く動かなくなる、これは明らかにショックを受けてる

 ええっと…ひょっとして、言い過ぎた………?



「……あれば、いいんだな………?」

「えっ?」

「オレにコミュニケーションが有れば、大切な人はもうなくならないんだな!?」

「えっ、あっ、ま、まあ、最低でも無駄な争いは避けられるんじゃないかしら………」

 勢いで聞いてくるシンにしどろもどろになって答える私。

 何がどうかは知らないけど、私はいつもと違う場所の地雷を踏んでしまったらしい。



「だったら………」

 シンが拳を握る

 瞳には怖いくらいの決意の色



 そういえばシンって妹を亡くしてるんだっけ………

 今の飲み込んだ言葉にはどんな思いが込められていたのか、私には分からない。

 でも、きっとシンは妹の他にも大切な人を失っている、気がした





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