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 なんでかがみに言ってしまったんだ?

 違う世界で、何も知らなくて、平和な世界でのうのうと生きてるヤツに



 自分の迂闊さに反吐が出る。

 こいつに聞いてもオレが納得する答えなんて得られない。



 それなのに

 話そうとしてしまった

 聞きそうになってしまった



 拳を握る

 血が出ても構わない

 これは罰なんだから



 他人を頼ろうとした罰



「ちょ、ちょっと! ま、待って!!」

 そのまま立ち去ろうとするところをかがみが呼び止める。

 そのまま歩いて行けばいいのに、なぜかオレは立ち止まってしまった。

 その間にかがみは再び口を開く。



「ま、まさかそんな顔でこなたに、学校に行かないって、そう言う気!?」

「ああ」

 踏ん切りは付いた

 それがオレが考えてた方向とは違うけど

 こんな怠惰な生活にこれ以上染まらないで済むと考えば、最良の答えといえるかもしれない



「あんたはそれでいいの!?」

「オレには必要がない」

「こなたが悲しむ!」

 その叫びに再び足を止める。

 だけどそれも一瞬



 オレが戦わないといけない世界があるんだから



「どうせこなたのことだから、きっとあんたが学校に来れば楽しいみたいな考えなんだろうけど、

 私はあんたが学校に言ってもそんな状況になるとは思えない!」

「オレもだ」



 コイツとの会話もこれで最後だ、もう会うこともない



「でもね! こなたはそう思ってる! あんたといたら楽しいってきっと思ちゃってる!

 あんたはそんなこなたを、悲しませる気!? あんたにとってこなたってその程度の存在なの!?」

 今にも泣き出しそうな、それでいて決して弱くない声。

 それはあっさりと無視していけないもの



「でも、ないんだよ」

「えっ?」

 振り向くとやはりかがみの目からうっすらと涙が滲んでいた。

 コイツはオレの中で泣いているイメージが強い、それなのにオレはかがみが弱い人間というイメージはない。

 なぜならいつもかがみは人の為に泣いてるから

 きっと口ではどうこうの言ってるがかがみはこなたのこうを想っている。



 オレにはもうないもの



 それが



 少し



 少しだけ



「学べるものがないんだ」





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