20
「ふぅ………、ごめん」
にらみ合うこと数秒、謝ったのは私の方だった。
今回の件に関していえばシンの言う通り、ただの八つ当たり。
シンは悪くないし、私が全面的に悪い
でもなぜかシンは少し驚いた顔でこっちを見てた。
「いや、普通に謝るとは思ってなかった。ちょっと…じゃないな、かなり意外だ」
「あんたね〜人が素直に謝ったら………」
「悪い悪い」
シンが手を出して小さく笑う。
シンが普通に笑うのは珍しい。大体は仏頂面、よくて皮肉な笑み、今日は機嫌がいいのだろうか?
「でもなんでこれを、シンが?」
「ああ………、ちょっとな………」
私の質問に歯切れが悪くなるシン。
これもまた珍しい。こういう場合のシンは黙るか、話すかのどっちかなのだから
少しの沈黙、周りの子供達の遊んでいる声が辺りをにぎやかしてくる。
「ちょっと考え事をしたかったんだ」
シンは笑う、でもそれはさっきと違って憂いが混ざった笑み。
その姿のシンはとても大人っぽくて、とても同じ年齢の男子とは思えなかった。
「こなた絡み?」
私は恐る恐る尋ねる。
下手にシンの事を聞けば危ない事は経験から分かっているのだけど、それがこなたとのことであれば、見過ごすことも出来ない。
「こなたが学校行かないかって」
予想に反してシンは清々しいともいえる顔で答える。
今の顔からは普段がとても気難しい少年とは思えない。それどころかファンクラブがいるアイドルといっても頷いてしまう。
今日のシンはどれも私の見たことのないものだった
「行かないの、学校?」
そんなシンの表情に魅せられたわけでは決してないのだけど、私は不覚にも遠慮もなく尋ねてしまった。
そして気付いた時にはもう遅かった。
たちまちシンの目付きが、誰も寄せ付けようとしない鋭いものへと変わっていく。
「あんたには関係ないだろ」
冷たくシンは言い放つ。
秋の天気にシンの態度
たちまちにしてシンはいつもの機嫌へと戻っていった。