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「……遅い」
部屋の掃除も終わり、迎える準備も万全だというのに一向に客が来ない
いい加減で適当なこなただから遅刻は当たり前。ましてや今回は時間も特に決めていない
とはいえ、いくらなんでも、私の家とこなたの家の距離を考えたらもうそろそろ来てもいい時間のはずだ
さすがに忘れて家でゲームをしているなんて事はないと信じたい
「……でもこなただし」
否定出来ないのが悲しい
ただそこまではいい加減な人間だったら見限っているし、一年間の付き合いでそこらへんは分かっている
「にしても遅い!」
これは来たら文句の一つや二つや三つは言わないと気が収まらない。
なんせこっちはからかわれながらも、きちんともてなしの準備をしたのだから
ピンポーン
「来たっ!」
チャイムの音と共に私は立ち上がる。
「私が出る!」
階段を駆け下りながら私は宣言する。
これ以上お母さんにニヤニヤ顔をされてはたまらない! そしたら今度はこなたにもからかわれる!
とはいえこんなスピードで駆け下りてきたら余計に致命的である。
そう気付いたのは玄関に着いてから
「………うっうんっ!」
バツが悪くなった私は誰もいない玄関で咳払いを一つして髪をかき上げる。
何をやっても逆効果としか思えないし、実際にその通りなんだろうけど
何やってるんだ私は………、高校生にもなって
少し凹みながら玄関を開ける。
「えっ?」
驚き、そして次にやってきたのは、異常といえるくらいのがっかり感。
こなたどころか全く予想すらしていない人物が引き戸を開けるとそこにいた。
「よっ」
そして目の前の人物は笑顔も浮かべず、仏頂面に近い顔で軽く手を上げた。