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「そうじろうさんは何もオレに言わないんですか?」
騒がしいのが出かけていき平穏な時間が訪れた泉家で、オレは食後のコーヒーをすすっている家主に尋ねる。
「昨日言ったじゃないか。賛成だって」
「いや、あの………、他にはないんですか?」
一言あっさりと言われてしまうと、さすがになんと返していいのか分からない
こなたがいくら声高に学校に行けと言おうが、オレががんなにそれ拒否しようが、結局は費用を受け持つのはそうじろうさんだ。
そうじろうさんならオレが気付いてないことが見えてるかもしれないし、その意見には耳を傾ける価値があると思う。
そして何よりオレはそうじろうさんに恩という貸しがある。
云わばそうじろうさんはオレに命令する権利を持っているということだ。
「そりゃあ俺にも考えはあるよ」
そこで言葉を止めて、そうじろうさんはまるで父さんの様な優しい眼差しをオレに向けてくる。
「それを言ったらシン君を迷わせるだけだからな。自分のことは自分で決めたらいいさ
そして俺は君が出した考えを尊重する」
そうじろうさんの言葉に偽りというのがないというのは、僅かな共同生活を過ごした中でも分かっている。
オレがこなたの提案を拒否しても、そうじろうさんはきっとオレを恨まないだろう
その事が今分かっただけでも気が楽になる。さすがに恩人に砂を掛ける様な事はオレもしたくない
「取り合えず、テキストに目を通してみます」
それなのにオレはどこかで理由を探していた。
拒否しない理由を