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「かがみっ!」
オレはすぐに我に戻ると、かがみに自分のコートを着せる。
なにしてるんだ?
どうしてここにいるんだ?
こんな雪の中でオレを待ってたっていうのか?
「なにしてるんだよ!?」
オレはかがみを抱きしめる。
その体は予想通り凄く冷たい。
オレがもし出るのが遅くなっていたら、かがみはあの時の少女の様になっていたのかもしれない。
「かがみ、かがみ!!」
オレは狂ったように、叫ぶように、今1番守りたい人の名を呼んだ。
「お・お・げ・さ!」
言葉と共にかがみはオレを突き飛ばす。
呆然とかがみを見るオレとは逆に、かがみは特徴的なツリ目をさらに釣り上げてこっちを見てくる。
「あのね、私だって馬鹿じゃないから。まだ一〇分くらいしか待ってないわよ」
「そ、それでもだな………」
こう見えてかがみは風邪を引きやすい。そしてオレはその度に不安に襲われる。
かがみがいなくなってしまうんじゃないかって
「大丈夫よ」
未だ動揺しているオレに、かがみはさっきと違って柔らかい微笑みを向けてくる。
それだけなのにオレの心は平静を取り戻していく。
「でもこんなことしなくてもいいだろ?」
安心したら、かがみの行動に腹が立ってきた。
かがみはオレがどれだけ心配するか、なんてきっと分かってないんだろう
自分のかけがえのない人が目の前で無理をしてる、それがどれだけの―――
「……シン?」
怒声を続けないオレをかがみは少し不安げに、少し不思議そうに見ている。
オレが今かがみに思ってる感情。
ひょっとしてオレはかがみに毎度こんな思いをさせてるんじゃないか?
本人からしたら大丈夫に見える行動も
他人から見たら
しかもそれが大切な人だったら
かがみの心配の声を、オレはいつも『大丈夫』と言って止めなかった。
それでオレはかがみは納得してくれたと思い込んでいた。
でも本当は不安を我慢していたのだとしたら?
さっきのオレみたいな感情に何度も襲われていたのだとしたら?