「えっ、ちっちょ、ちょっと!? シン!?」

 一向に怒ってこないどころか、再び私を抱きしめるシン。

 もちろん私の顔は未だに降り続けている雪とは逆に真っ赤になる。



 私が往来でこんなことするのを嫌がってるのを知ってるはずなのに、いくら今は人が少ないからって………



「ちょっと、いくらなんでも―――」

「ごめんかがみ」

 離れようとする手が止まる。

 抱きしめてきた理由が分かったからじゃない、むしろ逆、謝られてますますわけが分からなくなった。

 まさか怒声を上げたことを謝ってるわけじゃないはず。シンが言いたいことも言わずに、矛を引っ込めるなんて考えられない。



「約束する」

 まるで分からない私を置いてシンはさっさと話を続ける。



「オレがムチャをする時は、ちゃんと前にかがみに話して許可もらうから」

 真剣な目でそう宣言するシン。

 どこをどうしたら、そういうことになったのか分からないけど、今ので私が思っている心配事の一つが消えた。

 でもなんでシン分かったんだろ?

 シンに限って人の心が読めたなんてこと絶対にないだろうし………。

 ともかく、シンがせっかく宣言してくれたのだ。私もそれにちゃんと答えないといけない。



「私も無茶する時は、ちゃんと言うから」



 もっとも私達二人とも、反対を押し切って無茶しそうな気はするけど

 でも少なくとも、心配されてるってことが分かれば抑えはきくだろう

 シンも同じことを思ったのだろう。今日初めて笑顔を見せる。



「かがみ」

「シン………、ストップー!」

 と、いかんいかん、もう少しで流れでこんなところでキスしかけた。

 シンは不満かも知れないけど、こっちにだってポリシーというか、決まりというか、恥ずかしい。

 それにそもそもこんな寒い思いしてキスをしにきたわけじゃない



「はい、これ、チョコ、一応手作り!」

 私は手に持っていたものをようやくにしてシンに差し出す。



 そう、伝えたいのは想いなのだ

 分かるでしょ? あんたなら



 私が何を望んでるか

 分かるよね? あんたには





 そしてシンはチョコをわざわざ手袋を外して手に取り

「ありがとな、かがみ」



 私が望むものをちゃんと返してくれた。





〜 F i n 〜   






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