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『まあ、あんたに空気が読めると思ってなんかいないから』
「しょうがないだろ………」
かがみの口撃に防戦一方のオレ。
そしてまた人間とは金がないと生きていけないというのも事実なわけで、貧乏学生のオレは平日にはバイトをしなくちゃならない。
講義のない、春休みはその絶好の機会。
「夕方の6時には終わるから、な?」
とはいえ考えもなくシフトを出したのは、迂闊で残念としか言いようがない。
そして聞こえる溜息。
『はいはい、じゃあそれくらいにね』
それでもオレの事情をよく知ってくれてるかがみは、特に文句を言わない。
『というか大丈夫なの? この前からずっとバイトじゃない?』
それどころか本当に心配している声で尋ねてくる。
確かにここ一週間くらいはずっとバイトをしてるけど、それはさすがに、一周回って気を回しすぎだ。
「大丈夫だ、心配するな」
『でも………』
そんくらいで倒れるほど、身体的にも遺伝子的にもヤワじゃない。
とはいえ都合をつけれたのにしなかったのはオレのミス。
でもこのまま終わるオレじゃもちろんない。
「次の日は空けたからさ、一緒にいような」
『…………』
再び沈黙。でもこれがさっきとは別の意味ということは過去の経験と雰囲気で分かる。
『ば、ば、馬鹿じゃないの!? た、たがが、チョコもらうくらいで、べ、別にそこまでしなくて、い、い、いいわよ!』
分かりやすぎる反応に思わず笑みがこぼれる。
これでさっきの分は返せただろう。
『じ、じゃあ、明日、先に家に入って、ま、待っとくから!』
形勢不利と悟ったのか、かがみはどもりながら早口でまくし立てると携帯を切った。
本当に分かりやすすぎる
その日のオレは終始機嫌が良かった。