『Given uneasiness』





 大学の春休みは長い。

 高校の時に比べるとだいたい3倍くらいってとこだろう。それだけ多ければ時間に空きができるのは当然。

 それは歓迎すべきことだ。自分のやりたいことができるし、そして何より



『じゃあ明日ね』

「ああ」



 彼女に会える日が増えるのだから



『で、明日はいつから行っていいの?』

 携帯越しに聞こえるかがみの声は弾んでいる様に聞こえる。

 だけどオレはその逆。かがみに明日の予定を言うのがつらい。



「……そ、その、オレ明日バイト入っててさ………」

『…………』



 予想通りの沈黙が流れる。



『あんた、明日なんの日か分かってるわよね?』

 怒る、というより呆れ、そんな声。そしてかがみが今、どんな顔をしているか簡単に想像が付く声だった。

 この世界に来てもう数年、この世界での明日はどんな日かはもちろん知っている。

 そしてかがみがそんな声を出す理由も

「しょうがないだろ? 平日なんだから………」

 弱気になっては駄目と知りつつもオレの反論の声は小さい。



 バレンタイン

 オレのいた世界とは違って、この世界では恋人達の日。

 オレのいた世界ではそれは哀しみの日。

 だけど人間ってのは勝手な生き物で、今のオレにはかがみという存在がいる。

 だからこの日は、オレにとってはもう祝福の日。





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