『Given uneasiness』
1
大学の春休みは長い。
高校の時に比べるとだいたい3倍くらいってとこだろう。それだけ多ければ時間に空きができるのは当然。
それは歓迎すべきことだ。自分のやりたいことができるし、そして何より
『じゃあ明日ね』
「ああ」
彼女に会える日が増えるのだから
『で、明日はいつから行っていいの?』
携帯越しに聞こえるかがみの声は弾んでいる様に聞こえる。
だけどオレはその逆。かがみに明日の予定を言うのがつらい。
「……そ、その、オレ明日バイト入っててさ………」
『…………』
予想通りの沈黙が流れる。
『あんた、明日なんの日か分かってるわよね?』
怒る、というより呆れ、そんな声。そしてかがみが今、どんな顔をしているか簡単に想像が付く声だった。
この世界に来てもう数年、この世界での明日はどんな日かはもちろん知っている。
そしてかがみがそんな声を出す理由も
「しょうがないだろ? 平日なんだから………」
弱気になっては駄目と知りつつもオレの反論の声は小さい。
バレンタイン
オレのいた世界とは違って、この世界では恋人達の日。
オレのいた世界ではそれは哀しみの日。
だけど人間ってのは勝手な生き物で、今のオレにはかがみという存在がいる。
だからこの日は、オレにとってはもう祝福の日。