「あそこは楽しいけど、何時までも泉家で世話になってるってのもな

 タイミング的にはいいと思うし」

「あっ、う、うん………」

「ありがとな、かがみ」

「えっ?」

「かがみが明日のことを考えて、動いてるから、オレもそれを決めれた、負けていられないって思ってさ」

「そ、そんな…私、シンに勝ってることなんて何もない、それなのに、どうしてシンはそんなことを言うの?」



 それを言った後のシンの顔は、まさに唖然というものだった。

 まるで私がとんでもない間違いをしているかの様に



「それは嫌味かよ、成績いっつも勝ってただろ?」

「そ、それは、シンがこの世界に来てまだ短いから………」

 シンは異世界からここに飛ばされて、まだ二年も経っていない。

 むしろそんな状況で上位の大学に合格しているのだから、褒められこそすれ、貶すなんてできるわけがない



「オレも復習とか練習とかやるけど、それはやらなきゃいけない状態に陥った時だけだ。それに結果が出たら調子に乗って、怒られたことも度々だ

でもかがみはいつも普通にしてた、それってかなり凄いことだと思うぞ」

「でもそれは勝ったうちには入らないわよ………」

「かがみはいっっつも、オレが迷ってる時は、押したり引いたりして、導いてくれた!

 あんたにはいつも負けてる! いつも助けてもらってる!」

「……シン」

「たまにはオレが助けるんだ! かがみのことを!」

 真剣な表情でこっちに詰め寄ってくるシンに、私は足が動けなかった。

 怯んだわけじゃない、言い返そうというものでもない



 私に対するシンの気持ちを感じたから

 だから私も真剣にシンを見つめ返す。



 多分これが恋人達の本能というもの



「オレは絶対協力する」



 私の答えを聞こうとはしなかった



 抗う気なんて起きない

 涙を拭うことすらしない



 生まれて初めてのキスの味は少ししょっぱかった





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