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リビングに入ったオレは直後の記憶が飛んでいた。
何を馬鹿なと思うかもしれない。だが考えても見てくれ。
なぜかは知らないが、自分の可愛い彼女が、
オレがアイロンをかけようと置いておいた喫茶店のバイトで着るYシャツだけを着て、ベッドに腰掛けている。
それは記憶も飛ぶだろう。
白いシーツに描かれた紫色の鮮やかな紋様。今まで見た事もない綺麗で神秘的な光景に魅入られる形でオレは我に返った。
目線を下げると呆然としたかがみの顔。
「わ、わ、わ、ワルイ!! あ、あの…い、いや………」
なんとか理性を保ちつつ、オレはかがみに謝る。
オレだって男である以上、愛する人、かがみとはそういうことをしたいという思いは抱いていた。
だがかがみからしたら、オレの家に来たのは止むを得ない事態のためで、決して事前に心の準備をしてきたわけではない。
言わばオレがそんな事をしないと信頼してるからこそ家に来てくれたのだ。
それなのにオレは、かがみの信頼を裏切り今ベッドにかがみを押し倒している。
今すぐ退けば恋人同士の過剰なスキンシップで済むかもしれないのに、本能がそうさせるのか、体は全く動けない。
「……わよ………」
「えっ?」
蚊の鳴くようなかがみの声にオレは耳を疑う。
「私、シンになら………」
「……本気か? ………」
オレの質問にかがみは顔を赤らめて、首だけを横に向ける。
「……どうせ、私はシンとしかしないんだし…早いか遅いかの違いよ………」
「……かがみ」
それはオレとずっと一緒にいてくれるということ。
分かってはいたが、オレは改めて認識する。
「いいんだな、かがみ?」
「……いいって言ってるでしょ? あんまりくどいと気が変わるわよ………」
相変わらず、視線をオレに合わせようとしないかがみ、だけどその行動がとても可愛く愛おしい。
そう、オレはこの素直じゃなくて心優しい少女を心から愛して、守りたい事を。