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「何よ、シンのやつ上しかないじゃない!?」
シンが服を用意したとシャワー中に声を掛けてきたが、あるのはワイシャツのみ、しかもサイズはブカブカ。
といってもこっちがいきなり転がり込んできた形になったわけだし、文句も言えるわけがない。
というかあいつ私の服洗濯機に持っていったな………。
元軍人だからそんなのなんとも思わないかもしれないけど、こっちは気にするの!!!
本当にデリカシーというのがないわよねーあいつは。
「シン出たからー!」
「分かったー」
少し怒り気味にトイレに入っているシンに声を掛けると、私は廊下に出た。
部屋はリビングとキッチンに分かれていて、とても学生が一人暮らしで住む家とは思えない。
その代わり駅まで無茶苦茶遠いし、急行や特急も止まらない。
こなたの話だと、私がいつでも来れるように広い家を借りたらしい。
聞いた時はそんな馬鹿なと笑ったけど、この家の広さと綺麗さを見ると案外本当なのかもしれない。
立ってるのもなんなので、私はベッドに腰掛ける。
……あいつ、ここに寝てるのよね………。
…………。
待て待て、今、変な事を考えてなかったか?私。
大体シンは全くそんな気ないし、何も起こりそうにない。
シチュエーション的にも特に盛り上がっているというわけでは………。
先にシャワーを浴びた女(私)
その女の服装、ダボダボのワイシャツのみ
いる場所、ベッドに腰掛けてる
この家の家主との関係、恋人同士。
…………。
「マズいマズいマズーーい!!」
イカン! 気付いたら全ての条件を満たしてる!!
これはいくら鈍いシンでも気付く! どうする? どうすんの私!?
……そうだ! 取りあえずこのベッドから―――
だが私のその判断は遅すぎた。
「かがみ! お前、一体どの服を着たんだ!?」
ここにピースは全て揃ってしまった………。