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「弱ったわね〜」
「ああ、弱ったな」
私の呟きに、彼氏であるシンも呟きで返す。
そして二人が見る視線の先には雫がたくさん。
新聞見たら晴れってあったんだけど………。
教訓、天気予報はあてにならん。
久しぶりに会った私達は積もる話と晩御飯も兼ねて、ファミレスに入った。
それがそもそもの間違いだった。
当然久しぶりに恋人同士が会ったのだから会話が弾んでしまい、気付いたら予定の時間より話し込み、
慌てて店を出ると雨が降っていたというわけだ。
もうかれこれ三十分くらいはこうしているのだが、一向に雨は止む気配を見せない。
それに………。
「うぅ………」
私はあまりの寒さに身を震わせる。
今の季節、日中は暖かいが日が沈むと気温はぐっと下がる。
しかも私は今日は夜には家に帰る予定だったため、厚着の服を用意してこなかった。
パサッ
私の肩に何かが羽織られる感触。
確かめなくても分かる、シンが上着を私に掛けてくれたのだ。
「さてどうするか?」
ゆるくなったとはいえ普通の人に比べると鋭い目つきでシンは相変わらず、水滴を睨みつけていた。
シンにとっては当たり前の行動。だけどそれが嬉しい。
といっていつまでもこうやってるわけにはいかない。このままでは本当に風邪を引いてしまう。
そうしたらシンは恐らく自分の責任と思いショックを受ける。それだけはなんとしても避けたい…そうだ!
「ねぇシン? あんたの家ここから近いんでしょ?」
「ん? ……まあ走ったら10分もかからないな」
「じゃあ、取りあえず行きましょ………」
私はそこで自分の言った言葉の意味の意味に気付き、途中で止める。
な、な、な、な、何言ってんの私はー!? こんなんだったら私まるで『あれ』をしたいみたいじゃない!?
「…………」
シンが無言で赤い瞳でこっちを見つめてくる。
終わりだー! シンにそんな女だと思われたー!! もう終わりだー!!!
「確かにそれが1番妥当だな」
シンはあっさりと頷く。
というか私の言葉の意味を分かってないっぽい…ほっとしたような、
がっかりしたような…ってがっかりしてない! がっかりしてない! 私達付き合ってまだ二か月だし、早いわよ!!
「よし行くぞ!!」
そう言うと、シンは手を差し出す。
私はその手を握る。シンの手から感じる体温のお陰で寒さを感じなかった。