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「本当に、本当に不安だったのよ! 電話に出てくれないし、メールも返してくれないし………」
上目遣いにオレに文句を言ってくるかがみはいつもより、なんだか幼く見える。
それだけオレがかがみに心配を掛けたという事なんだろう。全く情けない限りだ
「……メール? パソコンの方には来てなかったけど………」
オレのふと湧いた疑問にかがみの目が開かれる。
その様子からはそんな事が頭に過ぎらなかった事を物語っていた。
「ごめん、私ったら、肝心な時に駄目よね」
「そんな事ない、むしろ肝心な時に頼りになる」
オレの笑いにつられて微笑むかがみ、目に涙がまだ残っているものの、そこにはいつものかがみがいた。
大事な時には隣りにいて、力になってくれるかがみが。
「ねえ、シン、今週デートの続きしましょ」
「あーうーん………」
曖昧な返事、視線外し、露骨に分かりやすいくらいオレは困ったという行動を取る。
勿論、これはかがみとデートをするのを嫌がってるというわけでは決してない。
理由は
「お金がなー」
「えっ、そんなにないの?」
「いや〜携帯の電源が入ってなかっただろ?」
「うん」
「あれな、オレがあの日に怒りにまかせてついつい」
「……壊したの? ………」
恐らくかがみは必死にフォローの言葉を探してくれているのだろう。
笑顔のままフリーズしてしまった。
そしてさらに追加。
「……まだ理由があるんだ」
「まだ?」
「ああ、あの日かがみの前で大恥をかいたから、2度とあんな醜態はしないと、エアーホッケーの特訓に………」
「……まさか、あの日からずっと………?」
「ああ!
だけどこれでもう大丈夫だかがみ! かがみにあんな顔2度とさせやしないからな!」
胸を張るオレ、最早この近隣でオレにエアーホッケーで勝てるヤツなど皆無といっていい、
そんなオレを誇らしく思ったのか、かがみは飛びっきりの笑顔で
「人の気も知らないで………、何が、大丈夫よ!!!」
オレの足にブレイク・ザ・ワールド級の衝撃が襲い掛かった。