シンと連絡が取れなくて四日が経った。

 電話が無理なら直接家に行けば良かったのかもしれないけど、びっしりと入っている大学の講義がそれを許さなかった。

 それに、直接行って拒絶されたらと思うと、怖くてとてもじゃないけど行く気が起きなかった。

 このまま自然消滅、するのには私はあとなんリットルの涙を流したらいいのだろうか?

 枯れたと思われていた涙は毎晩出た。

 私はこんなにも弱かったのだろうか?

 少なくとも高校では狂暴と言われていたはずなのに………。



「柊さん」

 大学講義終了後、掲示板を見ていたら顔なじみの学生が声を掛けてきた。

 私はなんとか普段の顔を作り、対応する。

「何? あっ、休講情報貼ってあるわよ」

「今、正門前で柊さんを待ってる人がいてね、あっ柊さん―――」



 私はついさっきつけた、仮面をかなぐり捨てて、正門へ向う。

 あんなに拒絶されてると思ってるのに

 あんなに会うのが怖かったのに

 今はシンに会いたかった、声が聞きたかった。





「シン!」

「……悪いな、大学には来るなって言われてたのに………」

「ううん、いい! そんなのいいの!」

 抱きつきたい衝動をぐっと押さえ込み、私はシンと正対する。

 今、抱きつきにいくのは卑怯だ、シンの決断を鈍らせるものでしかない。



「…………」

「…………」

 沈黙が場を支配する。

 分かれる時のカップルとはこんな感じなのだろうか?

 そんな事を考えたくないのに、そんな事ばかりが頭の中を過ぎる。

 このままだと気が狂いそう

 でも私からは動くわけにはいかなかった。

 シンがもし本当に私に対して怒っているのなら、私が謝るわけにはいかない

 きっと私から謝罪の言葉を言ってしまえば、シンは私を許してしまう。

 シンは優しいから、どうしようもなく優しいから………



「かがみ」

 私の心の中が見えたわけではないだろうけど、先にシンから言葉を掛けてきた。

「ごめん」

 そして、そう言うとシンは頭を地面と平行にまで倒す。

 私はというとシンの言葉の意味を必死に考えていた。



「かがみを守れてなくてごめん!」

 私が頭の中で最悪の結論に辿り着いたと同時に、シンがその逆になる結論の言葉を言ってくる。

「かがみにあんな顔させちまって、絶対あんな顔させたくなかったのに………」

「シン、そんな…私が悪いのに…シンは怒ってもいいのよ!」

「何言ってんだよ! かがみの方こそオレにしっかり守れって怒ってくれてもいいんだぞ」

「……本当に? 本当にそう思ってるの?」

「当たり前だ! ……かがみの方こそオレを頼りにならないって思ってないのか?………」

「馬鹿! 思ってるわけないじゃ………」

 言葉は途中で止まり、枯れてたと思った涙がまた出てくる。



 でも昨日までとは違う。

 今は優しい存在に私は泣きついているのだから。





戻る   別の日常を見る   進める