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騒いでるとは思っていなかった。
俺もかがみもつかさもそれほど酒を呑む方じゃないし、
何より三人がこうして顔を合わせる事はほとんどないから話に華が咲いてしまい、お神酒は余り減っていなかった。
だけど寝ている子供にはやはりうるさかった様だ。
「……つかさちゃーん、一緒に寝よー」
れいが目を擦りながらリビングへやって来たのは、呑み始めて三時間が経過しょうという時だった。
「つかさ、れいと一緒に寝てあげてくれる?」
元々夜に強くなくさらにお酒が入ってるため、先ほどから話しに相槌か、
フネを漕いでるのか分からなくなってきたつかさを寝かせに掛かるかがみ。
慣れた感じはどれだけ年月が経っても、どれだけ違う生き方を選んでも二人は仲の良い姉妹なんだと思わせてくれる。
「う、うん…そうするね………。
お姉ちゃん、シンちゃんお休みー、れい君行こ」
「お休みー」
「まあゆっくりしていけよ。お休み」
返事も程々につかさはれいの手を引いてリビングを出て行った。
最も見ようによってはれいがつかさの手を引いてるとも取れなくもない。
一人減ったものの俺達の酒宴は一向に終わる気配を見せない。
つかさには悪いけど、むしろここからが本番といってもいいかもしれない
「今日のは衝撃だったな」
「そうよね、もう年を越すってのに」
れいとつかさの二人が部屋に入ったのを音で確認してからかがみが溜め息をしつつ、俺にお神酒を注ぐ。
あの時のれいの態度は正直いえば俺達にとってかなりショックの出来事だった。
つかさがいかにれいは普段俺達の事を尊敬してる、という話の類のフォローをしてくれなければ、
二人して神聖なお神酒がヤケ酒になってた事だろう
「なんか言い訳にしてたのかもね、れいが手のかからない子だからって」
「だな。もっとれいの事知らないとな。俺達の息子なんだから」
「うん」
俺達は笑い合って同時にお神酒を口に運ぶ。
もっと若かったらこういう時俺とかがみもかなり落ち込んで、自分を責めていた事だろう
それがますますお互いを傷つける事になるのを知らずに
それをせずにこうやって前を見て反省出来るのは、俺達が精神的に成長したのか、はたまた歳を取ったのか
前者であると思いたいけど、後者であってもかがみと一緒に歳を取れるのだからそれはそれでいい
「来年からの目標だな」
「明日からとは言わないのね?」
「残念だな、もう明日は来年だ」
かがみは自分の杯に注がれているお神酒を見ながら、俺の揚げ足に苦笑する。
どうやらお神酒のお陰で一本くらいは取り返せた様だ