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翌日、私は放課後にあいつの靴箱に手紙をいれた。
最初は卒業式の日に呼び出して告白しようと思っていたが、私の性格から当日にそんな事すると失敗する気が大いにしたので、
あえて手紙を出して自分に逃げられない状況に追いやったのだ。
もっともそれは手紙に書いた場所に来てくれたらの話で、もし来なかった場合は何も考えてない。
「つかさ、今日はありがとうね」
私は隣で漫画を読んでるつかさにお礼を言う。
私達とあいつは基本一緒に帰る。
だから普通だと手紙を靴箱に入れることは無理なので、つかさとこなたに頼んで、
あいつと校門前で待ち合わせてもらい、私はその間に手紙を靴箱に入れることができた。
「どういたしまして〜変わりにシンちゃんに送ったラブレター見せて」
「えっ、そ、それは………」
つかさの要求に私は視線を泳がせる。
手紙自体はパソコンを使って打ったために、文章は残っている。
「……まあ、いいわよ………」
しばし考えてから、私は渋々頷く。
私達二人の約束でこの手のことで隠し事はしない事にしている。
まあ内容的に、見られて恥ずかしい事は書いてないから問題もないはずだ。
「お姉ちゃん、これってラブレター?」
思った通り、つかさは内容を読んで首を捻る。
「大事な事は直接言いたいからね、用件だけを打ったのよ」
「さっすがお姉ちゃん! やっぱりカッコいいー!」
つかさが尊敬の眼差しで私を見てくる。
違うのつかさ、本当はそんなカッコいいもんじゃなくて、恥ずかしかったから用件しか打てなかったの………。
ちなみに手書きではないのもそれが理由だったりする。
……我ながらかなりのヘタレっぷりだ。
「……でもお姉ちゃん、これ名前がないよ?」
改めてパソコンを眺めながらつかさが私に聞いてくる。
「大丈夫、ちゃんと………」
あれ? 私、封の方に名前書いたっけ………?
「ごめん、ちょっとどいて!」
私は嫌な予感を感じつつ、つかさをどかすと、パソコンのディスプレイを見る。
本文にはつかさの言った通り私の名前は打ち込まれていない。
まさか…まさか………。
「……お姉ちゃん、ひょっとして………」
私は壊れかけのロボットのようにゆっくりとつかさの方を振り向いて、呻く。
「名前入れ忘れた………」