「まだ暗いな」

 現在の時刻は午前6時。

 オレは約束の場所に1時間早く来ていた。

 待ちきれなくて早く来てしまったというのもあるけど、もしあいつだったら、約束の30分前くらいには来るはず、

その時オレの姿がなかったらあいつは恐らく勝手に諦めて、帰ってしまう。困ったことにあいつはそういうヤツだ。

 ただ、もしも白石等のイタズラも考慮してオレは今、木の上に座っている。

 これで白石が来たら逆に驚かしてやろうという、という2段構えの完璧な作戦だ。



「といってもさすがに早すぎたか………」

 誰かが来るにしろ、最低でも後30分は待たないとやってこない。

 これで誰も来なかったら自分が無茶苦茶アホの子な気がするが、気にしないことにする。



「はぁはぁはぁ………」

 思考に気を取られていたからか、木の下にはいつの間にか1人の少女がいた。

 その少女はオレの知ってる人物だった。

 そして急いでここに来たらしく、息を切らせていた。

 そんなに急がなくても、まだ約束の時間まで30分以上もあるって。

 オレは嬉しさを飲み込むように心の中で少女に悪態をつく。



「……やっぱり、いな――きゃっ!?」

 少女の落胆の声は自身の小さな悲鳴にかき消される。

 悲鳴の原因はオレが上から現れたからだ。

 それに驚いたのか、オレが来てた事に驚いたのか、または両方か、少女は呆然とした感じで呟いた。

「な、な、んで………?」

「なんではないだろ? そっちが呼びだしたんだし」

 オレは少女に笑いかけた。





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