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「びっくりした〜」
「朝っぱらから驚かさないでよ! 何してたのよ?」
「なんでもない! なんでもない!」
2人に今の妄想が見えていないはずなのにオレは何かをかき消す仕草をしながら、否定の言葉を出す。
「でもシンちゃん、右手が背中にあるけど………?」
「腰! 腰が痛いから押さえてたんだよ、イタタタタ」
「シンちゃん、大丈夫!?」
オレのとっさのウソにつかさは本当に心配そうに声を掛けてくる。
……そんな目で見られると罪悪感が………。
「もう大丈夫だつかさ! よし、教室に行こうぜ!」
「そ、そう? よかった〜」
「う、うん………」
かがみの方はやはり完全には誤魔化せていないらしく、やや釈然としない顔をしている。
俺はそのことに気付かないふりをして、手紙をポケットに押し込んで、教室に向かった。
「そうなんですか、泉さん今日はお休みなんですか………」
「まったく、何が皆と会うために学校に来てる、よ。結局ゲームのほうが大事なんじゃない」
「まあまあ、お姉ちゃん」
いつもの他愛もない会話、これを後何回できるのか、と考える反面、どうせ卒業してもなんだかんだで皆で集まりそうな気はする。
だけど進路先は皆違うし、こうして毎日顔を合わせられる事はない。あいつの顔を見る時間も少なくなるはずだ………。
「シンさん、どうかされましたか?」
「えっ?」
「何か悩み事ですか?」
顔には出していないつもりでも、それが出ているのかみゆきが尋ねてくる。
「い、いやべ、別に!」
みゆきの出る母性から相談したいという衝動に駆られるが、こればっかりは出来るはずがない。
そんな事をすればオレのことだから興奮してこの場で簡易告白大会になりかねない。
「お〜しHR始めるぞ〜席に着け〜柊はよ自分のクラス戻れよ〜」
「は、はい、失礼します」
危うい所で、オレ達の担任の黒井先生が教室に入ってきたので、この話はそれっきりになった。
黒井先生ありがとうございます、今度レアアイテムプレゼントします
オレは心の中で黒井先生に頭を下げた。